「未体験のクリスティー、見たことのないポアロ」小山正
評価の高いBBC版「そして誰もいなくなった」ほか映像化作品について。
「私の偏愛クリスティー」井上雅彦・太田忠司・折原一・皆川博子・ほか
サタースウェイト老人への偏愛、シリーズキャラクター、「そっちかよ」の『鏡は横にひび割れて』、『そして誰もいなくなった』の型は史上初か、ほか、クリスティー賞優秀賞受賞者・春坂香月は『なぜエヴァンズに頼まなかったのか?』を。他に恩田陸・筒井康隆・山崎まどからが寄稿。
『戯曲版 そして誰もいなくなった』アガサ・クリスティー/浅田実訳
てっきりクリスティー文庫で刊行されているものとばかり思っていましたが、戯曲版はハヤカワ文庫では未刊行なんですね。なぜだろう。
「トリビュート小説ガイド」千街晶之
戸川安宣編による『マンドレークの声 杉みき子のミステリ世界』にはポワロものパロディ「ポケットにバランスを」が収録されているそうです。ほかに西澤保彦『リドル・ロマンス 迷宮浪漫』は、直接的なパロディ・パスティーシュではないものの、ハーリ・クィンを踏まえた作品集。
「伯母さんの殺し方(新訳)」シオドア・スタージョン/田口俊樹訳(How to Kill Your Aunty,Theodore Sturgeon,1961)
――留圖でだらしなく頭の悪いのが嫌いな老伯母は、甥のヒューバートを嫌悪していた。ヒューバートが自分を殺そうとしていることに気づいていたが、伯母は反対にヒューバートをがんじがらめにした。
「おやじの細腕新訳まくり」第2回。杉江松恋による解説つき。殺されそうになっている人物視点なのに、サスペンスではなく、こってりとした観察眼によるみっちりとした人間観察になっています。愚かなヒューバートは反面教師という意味でならハウツーというのも間違いではありません(?)。
「書評など」
◆シャーリイ・ジャクスン『鳥の巣』、R・オースティン・フリーマン『オシリスの眼』、〈シャーロック・ホームズの姉妹たち〉シリーズ、米澤穂信『いまさら翼といわれても』、西澤保彦『悪魔を憐れむ』、チャイナ・ミエヴィル『爆発の三つの欠片』のほか、『美女と野獣 オリジナル版』はよくある「本当は怖い」等ではなくボーモン夫人版以前のヴィルヌーヴ夫人による原典。
◆『アガサ・クリスティーと14の毒薬』キャサリン・ハーカップは、「なぜその毒が使われるべきだったのか、小説としての必然性や社会背景の吟味を含」んでいるという、この手の本にしてはなかなか面白そう。
◆大崎善生『いつかの夏 名古屋闇サイト殺人事件』はノンフィクションです。残酷な運命に襲われた被害者が最後の最後まで守り抜いた「一つの謎」は、知りたいと思う反面、これが実話だと思うとやりきれません。
◆漫画からはオノ・ナツメ『レディ&オールドマン』。バディものです。オノ・ナツメは完結したばかりの『ACCA』もミステリ要素がありました。
◆映画『牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件』は、「天才映画作家エドワード・ヤンの代表作」「二十五年ぶりのリバイバル」。
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