翻訳をする、聖書やシェイクスピアの引用がある、原文を検索、該当箇所を邦訳で調べる、というのが現在のwilderの翻訳スタイル。今はネットという便利なものがあるから、「引用」の場合だとこれでも用が足りる。
しかし誰もがカギカッコつきで「引用」してくれるとは限らない。微妙に言い回しを変えたり、地の文に溶け込ませたり、読んでいて何となく聖書っぽい記述やシェイクスピアやワイルド、ゲーテやダンテなどの古典っぽい記述にぶつかっても見当がつかないのだ。それでまあ通読しようと思ったわけなのだが、翻訳のおかげで前知識があることもあって面白い。
アナトール・フランスの「ユダヤの総督」で、ピラトゥスが愚痴をこぼすユダヤ人のむちゃくちゃ加減も、ちゃんと聖書には書かれてあった。より正確にはパリサイ派とサドカイ派のむちゃくちゃ加減なわけだけれど。福音書の作者によって書き方が違う。マタイとマルコはわりとあっさりしている。これだけ読んだらピラトゥスとパリサイ派はどっちも悪役なのだが、ルカとヨハネを読むと、ピラトゥスの何百倍もパリサイ派が極悪に書かれている。ルカとヨハネは何か恨みがあったのかなー、あったんだろうなぁ。
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