『天使の帰郷』キャロル・オコンネル/務台夏子訳(創元推理文庫)★★★☆☆

 このシリーズは読むたびどうも困ってしまう。例えば健気な女探偵ってのも違う(これ自体が今や古くさい構図だよね)。警察小説というわけでもない。といって一匹狼のハードボイルドとも違う。『クリスマスに少女は還る』のようなサスペンスとも言えない。

 前作、前々作で印象に残ったのは、微妙な距離感のマロリーとチャールズの恋愛だったり、ライカーや故マコーヴィッツの人物像だったり(こっちの方は警察小説と言えなくもない)したわけなんだけれど。今回は恋愛もなんか予定調和でさ。そもそもマロリーの出番が少ない。舞台がニューヨークじゃないから、ライカーも故マコーヴィッツも出番が少ない。チャールズ&地元民との絡みがほとんどで。

 過去の傷が少しずつ明らかになってゆくにつれて、マロリーの人間像が深みを増してゆくあたりは、一作目から読んでいる読者にはじんじんと心に響くところではあります。この点はシリーズが進むにつれてさらに期待できそう。

 残念なのが三橋暁氏による解説。〈できれば、この解説を先にお読みください〉……?。『クリスマスに少女は還る』にもありました、〈この拙文を先にお読みください〉萩原香氏。ただの作品紹介なのに。先に読む必然性ゼロでした。しかも作品紹介としては、簡潔にまとめられている分だけ、裏表紙の粗筋のほうが出来がいい。本書解説の場合は前作までの作品紹介なので、初めて読む読者には親切ではある。でもシリーズ全部読んでいる人間にとってはなんの役にも立たない。好意的に捉えれば、ミステリだとネタ割れ解説できないからしょうがなくこういう紹介解説になるんだろうけど、だからといって〈先にお読みください〉ってわざわざ書く必要はないでしょうに……。

 『Flight of the Stone Angel』Carol O'Connell,1997年。

 ルイジアナ州デイボーン。姿を消したマロリーをさがし、彼女の故郷を訪れたチャールズは、子供を抱いた天使の石像を見て驚いた。これは確かにマロリーの顔だ。17年前に惨殺された女医を悼んで刻まれた天使。腕の中の子供は、行方不明になった彼女の娘だという。一方、デイボーンでは、自閉症の青年が両手を負傷させられ、町の一角を占拠する宗教団体の教祖が殺された。そして、容疑者としてよそ者が勾留されているという。その名は、マロリー。誰にも一言も告げず、ひそかに帰郷した彼女の目的は? いま、石に鎖された天使が翼を広げる――過去の殺人を断罪するために! 鮮烈無比なヒロインの活躍を描くシリーズ第4弾。
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