「The Continuing Adventures of Rocket Boy」Daryl Gregory(『F&SF』誌2004年7月号)★★★★☆

 「二人称現在形」のダリル・グレゴリイの短篇。著者ホームページで読める。

 子ども時代の友人の思い出と、飲んだくれの父親と虐待――だなんて書くと、いかにもアメリカの作品にありがちだし、宇宙とスペースオペラに憧れる少年というのもSFの定番です。

 ところがこの作品の場合、そもそも冒頭がいきなりありきたりじゃないんです。自家製の張りぼてロケットに搭載していた自家製の怪しげな燃料が原因で、少年は爆死! ブラッドベリみたいな宇宙へのロマンと郷愁あたりを予想していたら、見事に現実に引き戻されました。

 死んだ少年の名はスティーヴィー。語り手はティム。成人したティムが故郷に戻ってきたところから、その後の物語は幕を開けます。以後、回想シーンと現在シーンが交互に語られてゆきます。

 そして徐々にいろいろな事実が明らかになってきます。スティーヴィーとティムが8ミリで自家製スペースオペラを作っていたこと。スティーヴィーが父親に折檻されていたらしいこと。ティムが戻ってきたのは自家製映画のフィルムを探すためと、スティーヴィーの父親を見張るため。

 やがてそれぞれの人間がそれぞれの過去を克服し、新しい世代へと未来を託すような印象で物語は終わります。タイトルはそこらあたり+映画の続編っぽさを兼ねているのでしょう。

 終盤のティムの台詞も恐らく『ジェダイの復讐(ジェダイの帰還)』に掛けています。でもどうも無理矢理スターウォーズに引っかけたかったんじゃないかって感じもするなあ。だって自家製フィルムの内容がいまいちピンと来ない。かえって残酷じゃないかって気がするんだけど……。息子が自殺したと思い込んでいた人に、自殺なんかするわけねーだろって目を開かせる効果はあるかもしれないけど。

 でも何にしろ、シリアスな現実を宇宙へのロマンと共に描いて、爽やかな読後感ももたらしてくれる作品でした。
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 http://www.darylgregory.com/
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