『ジャン・ジャック・ルソー「エミール」200年の旅』秋葉英則(清風堂書店出版部)★★☆☆☆

 教育者サイドによるルソー本というのは珍しい気がしたのですが、これはわたしがものを知らないだけで、ルソーはペスタロッチに影響を与えた人物として教育サイドからも高い評価をされているようです。

 何にしても面白そうだと手に取ってみました。

 本書は二部構成で、三分の二ほどを占める第一部がルソーの生涯に当てられています。ずいぶんとページを取っていますが、第二部を論じるために必要だったのか?と問われるならば、あんまり必要ないといえるでしょう。ほとんどが『孤独な散歩者』などからの引用→著者が自分の言葉でそれを繰り返す→引用→繰り返す→……というパターンの、それこそ繰り返しなので、めりはりがありませんし、第一ルソー自身の著作をすでに読んだ人間には無意味です。ただし、白黒とはいえ写真がふんだんに掲載されているので、これはありがたいし見ていて楽しい。

 さていよいよ肝心の第二部です。冒頭部分で現代の子供がおかれている状況などが記されていて、ルソーと現代をどう論じさばくのかと期待したのですが、結局ここでも『エミール』引用→著者の言葉で繰り返す→引用→繰り返す→……というだけに終始していて、残念ながら評論と呼べるような内容ではありませんでした。

 つまりこれは、読書会の副読本のようなものであって、ルソーを読んだことのない母親父親たちに、二百年以上も昔にこういうことを言っていた人がいたんだよ、と紹介するための本だったようです。そういう目的のためなら、丁寧でいい本なのかもしれません。

 でもそれにしては惹句にしてもまえがきにしても、現代を読み解く!みたいなご大層な感じだったのですが……。

 前述したとおり、白黒とはいえ写真が豊富なのでそこは高ポイントです。
 ----------------

 『ジャン・ジャック・ルソー 「エミール」200年の旅』
 amazon.co.jp amazon.co.jp で詳細を見る。


防犯カメラ