文章に著者のフィルターがかかるのは、そもそも歴史というものが所詮は一人一人のものの見方なのだから仕方がないにしても、それが著者の小説と同じような文体で綴られるのだからたまりません。
「こういう穏便な落着を図るあたり、支配者としては甘いというか、気楽な次男の育ちが抜けないというか、人格的にも侮られる理由はあったのかもしれない。」
「カエサルと同じ若禿げで、それを隠すために古風な月桂冠をかぶりたかったのだろうなどと、意地の悪い口はきくなかれ。」
「が、どこか心は満たされなかったのか、とうに分別もできていよう四十歳にして、フィリップは狂う。」
「恐らくは優しい男だったのだろう。時代の常識からはずれるくらい、図抜けて優しかったのだろう。」
類書が少ないだけにいい本なのですが。限られた新書のボリュームで文体に凝られると、ただただ引っかかりが多くて、ストレスの溜まる内容でした。もっと新書らしい癖のない文章でコンパクトにまとめるか、もっと嵩を取って小説として発表するか、どちらかにしてもらいたかったところです。
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『カペー朝 フランス王朝史1』
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