『9の扉』北村薫ほか(マガジンハウス)★★★☆☆

 前の作家からお題を拝借するリレー短編集。

 たぶん北村薫は、わざと非ミステリを書いたんだろうなあ、とは思うものの、冒頭の北村・法月を読んだ時点では、これは終わった、と思ってしまいました。こんなゆるいお題で続いていくのか……と。(あとがきを読むと、落語つながりもあるそうですが)。
 

北村薫「くしゅん」は場違い、法月綸太郎「まよい猫」は浮かれすぎ。

 アリスづくしの殊能将之「キラキラコウモリ」でようやく、らしくなってほっとしました。あとがきによると、アリスだけじゃなく、ヘミングウェイハロルド・ピンターもだそうです。ああ、なるほど。

 そして鳥飼否宇「ブラックジョーク」では、殊能氏に出されたお題だけでなく、これまでの作品すべてを取り込む試みに挑戦しています。こうでなくっちゃ。企画的にはだいぶ面白くなってきました。

 目当ての一人、麻耶雄嵩バッド・テイストは、期待通りの一篇。ミステリのネタをこんなふうに再利用したのは読んだことがありません。企画を活かしつつ、大胆で意地悪。
 

竹本健治「依存のお茶会」、これが偶然あたためていたネタとお題が重なったとは思えない題材と出来。タイトルからは『アリス』を連想しましたが実は……。
 

貫井徳郎「帳尻」は、歌野晶午「母ちゃん、おれだよ、おれおれ」のおかげで映えました。貫井作品のキャラクターの性格をうまく真似てて、笑えます。
 

辻村深月「さくら日和」でゴール。これもミステリではありません。

 全体的にちょっと物足りない作品集でした。
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