『カイウスはばかだ』ヘンリー・ウィンターフェルト/関楠生訳(岩波少年文庫)★★★☆☆

 『Caius ist ein Dummkopf』Henry Winterfeld。

 カイウスと喧嘩したルーフスは、書字板に「カイウスはばかだ」と落書きしたことから、クサンチップス先生から退学を申し渡され、帰宅する。翌日、神殿に「カイウスはばかだ」という落書きが書かれてあるのが発見される。神殿に落書きするのは皇帝に対する不敬であり、厳罰は免れないが、状況からルーフスが疑われる。同じころ、クサンチップス先生が襲われ、価値があるとは思われないものが盗まれていた。級友のムキウスやアントニウスは、ルーフスの無実を信じて真犯人を探し出そうとするが……。

 実際にあった「カイウスはばかだ」という落書きから、著者が空想を広げた、古代ローマが舞台の少年探偵団もの。リーダー格のムキウスや、知ったかぶりのアントニウス、時には厳しく時には優しいクサンチップス先生など、いかにも児童文学といった個性的なキャラクターたちが活躍するのが、本書のいちばんの見所です。犯人探しのほうも、筆跡鑑定をしたり、アリバイを確認したり――と、古代ローマが舞台とはいえなかなか本格的。ルーフスの服が濡れていた、という事実を補助的な手がかりにして、ルーフスがどこにいたかを論理的に導き出したり、それがいくつかの伏線になっていたりといった点も見逃せません。

  


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