児童文学作家による日常の謎ミステリ(?)。
ミステリとしてはかぎりなくゆるく、内容も娘が嫁に行く父親の単なる思い出話なんだけれど、なぜかほっこりしてしまう。過剰におセンチではないだけに、かえってじーんと来てしまいます。
そしてミステリ味は薄いとは言ってもミステリ・マインドはありました。「涙の理由」なんて、ミステリでも何でもないとも言えるのだけれど、こうした誤解というのはよくある話であるだけに、かえって印象的です。しかも伏線の張りめぐらされ方はなかなか。
「サンタが指輪を持ってくる」も、タイトルまんまの話なのですが、サンタの絡み方がいいじゃありませんか。理不尽な消灯時間と、見取図の挿入されているという、ミステリとしてフェアな姿勢は、東京創元社の作品ならではです。読み終えたあとですが、エクセルで塗りつぶしてちゃんと確認できました(^^)。
連作としては弱い――というより、ミステリではないのだけれど、けれどしっかり連作になっていたことに感嘆しました。娘の結婚式の日に回想するという形式に、ちゃんと意味があったんですね。すべては、ふうちゃんがどうしてその人を旦那さんに選んだのか、という疑問への答えとなっていたなんて。
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