「Night Land Gallery」山脇隆
「魔の図像学(6)レオナルド・ダ・ヴィンチ」樋口ヒロユキ
ダ・ヴィンチ『洗礼者聖ヨハネ』
「高橋葉介インタビュー ヨウスケの奇妙な本棚」文章・採録=植草昌実
「みどりの想い」ジョン・コリア/植草昌実訳/藤原ヨウコウ画(The Green Thought,John Colliar,1932)★★★★☆
――すぐに繁ったその蘭をマナリング氏は温室に移した。その花はどう見ても蠅の頭そっくりだった。それから二、三日して、従妹のジェーンの猫がいなくなった。
もう読むのも何度目かになるけれど、そのたび「人面花」というところしか覚えていませんでした。こんなに怖い話でしたか。甥の悪意にとは対照的に、植物としての穏やかな心を獲得してゆこうとする矢先のことですから、ショッキングでした。
「聖戦」サキ/和邇桃子訳(The Holy War,Saki,1913)★★★☆☆
――レヴィルが子供時代を過ごした懐かしい家を、仕切り屋の妻はどんどん変えていった。庭を変え、家禽を変え、森の動物を殺し……。
サキのイメージとは違い、黒いものであるにしろ笑いやユーモアがありません。
「〈奇妙な味〉の構成原理」岡和田晃
「ひらめきの帽子」ロバート・ブロック/植草昌実訳(The Thinking Cap,Robert Broch,1953)★★☆☆☆
――バーナビー・コッド。小説家。だが今は死んだような状態だ。クレオという女性からもらった帽子をかぶると、夢を見るようになった。どんなジャンルの小説も書けるようになった。
小説家の願望を夢オチからさらにアリスの夢ふうにひっくり返しているのが見事です。
「STRANGE STORIES――奇妙な味の古典を求めて(3) フィルポッツの奇妙な味」安田均
フィルポッツというと悪い意味での「古典」を書く人というイメージでしたが、短篇群は読んでみたいものです。
「愛車の助言」チャールズ・ボーモント/植草昌実訳(Auto Suggestion,1965)★★★☆☆
――ルウェインの車がとつぜん口を利き出した。ルウェインは車の口に乗せられるようにして、自由気ままな行動を取り始める……。
ブロックの作品にしても、このボーモントの作品にしても、オチやアイデアを求めてしまうとありきたりすぎて物足りませんが、この作品もブロック作品同様に狂気という現実に着地しながら、それが解決ではなくさらなる異常へとつながっています。
「〈異色作家〉の三つのタイプ」風間賢二
「一休髑髏譚 白巾(前篇)」朝松健
「召喚の蛮名―GOETY―」(1)槻城ゆう子
「往く先は風に」ネイサン・バリングルード/小椋姿子訳(You Go Where It Takes You,Nathan Ballingrud,2003)★★★★☆
――子持ちのトニが勤め先のダイナーで出会った男は、車を盗んで来たと言った。「たぶん、人を殺してしまったんだろう。見てごらん」 車のなかにある箱に入っていたのは、人間の……。
行き詰まりを感じている主人公が、文字通り別人になるという発想を、ホラーともマジックリアリズムともつかないタッチで描いています。翻ってこれをただの駄洒落でしか書けないのがフランスの作家という印象です。
「レイ・ブラッドベリを忘れた男」ニール・ゲイマン/牧原勝志訳(The Man Who Forgot Ray Bradbury,2012)★★★★☆
――忘れていく。今はそれが恐ろしい。「なぜか親指がうずく……」シェイクスピア。彼は今のところ無事だ。十二歳の頃、私は本を読み、映画を見て、紙の燃える温度を知り、それを忘れてはいけない、と思った。だがあの昇火士《ファイアマン》たち同様に、本を棚からなくそうとする人々がいる。
ブラッドベリ追悼。
「ブックガイド 奇妙な味の短篇集七選」植草昌実
山川方夫やミュリエル・スパークの短篇を「奇妙な味」の観点から紹介しているほか、松山巌『ちちんぷいぷい』
「しろたえの袖《スリーブ》――拝啓、紀貫之どの」ケン・リュウ/待兼音二郎訳(White Hempen Sleeves,Ken Liu,2016)★★☆☆☆
――精神に義体《モーフ》を好きに着せ、魂《エゴ》を複製し分離することができる未来。わたしは生還が期待できない旅に出るはめになった。
ゲーム『エクリプス・フェイズ』のシェアワールド短篇だそうです。好きではない作家+興味のないゲームという二重苦でした。