『笑うヤシュ・クック・モ』改題。
作者が沢村凜で「ヤシュ・クック・モ」なんてタイトルだから、てっきりファンタジーかと思ってましたが、純然たるミステリーでした。
それぞれに屈託を抱えている5人の同窓生のうち、高等遊民的な生活を送る皓雅が中心となって足を使った探偵活動にいそしみます。この屈託、というのが、物語に深みを与えているといった味つけに過ぎないわけではなく、ちゃんと謎と真相にからんでくるのがミソです。
当選していたはずの宝くじの、なぜか番号が違っていた、という謎や、ラブホテルから出てきた恩師と出くわしその写真を撮って逃げ出した同窓生、といったエピソードなど、何気ないながらドラマチックなミステリーが魅力的です。
宝くじの真相を確かめるため、投票券を写したカメラを現像したはずが……取り違えられたカメラを追って、皓雅たちはカメラの持ち主をさがすことにします。
ヤシュ・クック・モとはマヤ文明の王の一人で、カメラの持ち主がマヤ展とつながりがあるらしいという設定のほか、各章や物語の流れがマヤ遺跡に則って書かれていて、〈犯人〉にたどり着いたシーンは、不謹慎ながら美しいとさえ思ってしまいました。
大学卒業後、ニート、フリーター、サラリーマン、コンビニ店主、研究者という立場にある同級生5人が集った。再会記念のtotoで見事1等を予想したのに、toto券に印刷された数字は、なぜか一つ違っていた……。仲間への疑心暗鬼が募るなか、彼らを導いたのは全く無関係に思われる「マヤ遺跡」だった。遺跡が熊り進められるように、意外な事実が明らかになる。果たして男たちが手に入れたものは何なのか。現実社会を生きる人間の切実さや愛おしさが、胸に深々と沁みる長編ミステリー。(カバーあらすじ)
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