『幽』を毎号買ってはいるのだけれど、実のところ実話怪談とか創作怪談とかいうものはあまり好きじゃない。さすがにこの『幽』は、心霊とかオカルト科学みたいなとんでも系ではないのだけれど、それでもやっぱり実話怪談特有の文体というものがあって、それがどうもしっくりこなくて苦手なのである。だから小野不由美氏らによる実話怪談風小説や、京極氏による『耳嚢』再話などは、実話怪談テイストがうまく出ていてさすがだな〜と感心する反面、もっと小説風なりエッセイ風なりに書いてくれていたらなぁ……と思ってたりもするわけです。まあなんだかんだ言って毎号買ってるし全部読んではいるんだけど(笑)。
毎号買っている理由というのの一つが特集。今回は泉鏡花です。グラビア! 『夜叉ヶ池』を絵で見たいとどれほど思っていたことか。イメージの喚起力という点では「春昼」とともにマイ・ベストだったんですが、夢が叶いました。東氏による紀行文が各場所一ページずつで駆け足気味だったのが残念です。もっとじっくり読みたかったなァ……。でもまあ、波津彬子・加門・東座談会、波津氏による「化鳥」漫画化、加賀怪談紹介、怪事遭遇レポート、復刻鏡花作品、鏡花インタビュー再録、鏡花読書案内、等々といつもどおりに盛り沢山なので仕方ないですね。
そしてもう一つの目当てが巻末の連載「日本の古き神々を訪ねて」です。日本の古典が好きなれど神社仏閣の知識なし、の悲しさゆえ、基本書みたいなものがほしいのですが、探してみてもこれがなかなか見つからない。だからこういう連載は待ち望んでいました。今さらこういう連載があるってことは、やはりこうした基本図書ってほかに存在しないということなのでしょうか? 末永く続けてさらには増補加筆単行本化されてそのうえ仏閣編とかまで開始されてほしい連載です。
ほかに松谷みよ子氏インタビューも収録。さらに、怪談創作に興味はなくとも東・京極・木原・中山座談会は必読でしょう!?
ところで第一号に載っていた「名作怪談再録」のコーナーはなくなってしまったのだろうか? 不評だったのかな。実話+創作新作+創作旧作+評論+漫画どれもまんべんなくというのが個人的にはよいのだけれど。
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