『団地ともお』6巻 小田扉 ★★★★★

 六巻が出た。抽選でストラップが当たる応募券つき。ジャンパー仕様。この柄Tシャツにもなっちゃったし。一人歩きさせたくなるような、あり得ない柄ではある。

 収録作は「最強の乗り物になってやるともお」「ついでに挨拶だぜともお」「交わす挨拶だぜともお」「ハラペコより大事だぜともお」「雨に唄えばうんざりだぜともお」「当座の目標が大事だぜともお」「親子の秘密さぐっちゃうぞともお」「親バカになるのも命がけだぜともお」「約束って一体なんだっけともお」「苦しいときには何を出すのかなともお」「何か写ってるぞともお」「すずしげだろともお」「たーんとお食べともお」「迷宮を抜け出せともお」「6と7もきっとあるぜともお」の十五編。

 ともおのじいちゃんって一人胸中モノローグでボケる。胸中だから誰にもつっこめない。だからボケっぱなしの妙なおかしみがあって大好きだ。というわけで一番好きな話は「何か写ってるぞともお」。じいちゃんだけじゃなくて、心霊写真を撮ろうとしているうちに、なぜかUFOの写真や特撮(?)トリック写真を撮ってしまうともおたちや、母さんの昔の写真とかいろいろ楽しい。

「約束って一体なんだっけともお」は、大げさにいうと叙述トリックだよね(笑)。それも、『ともお』でしか成り立たない。だれもが玉川さん(兄)のことを、死んでしまった弟だといつまでも思っているという、普通であればありえない設定。もはや団地は閉じられた異世界である。それに読者も、ともおバカだからなーと違和感なく思っているわけだし。玉川さん自身もいつしかそれを当たり前だと受け止めちゃってるし。だからこそ団地外の人間が現れたときに落差が生じるわけで。玉川さんが最初に登場した話もたしかそんなようなラストだった。

 ミステリから離れられないけれど、本編は『メグレと殺人者たち』や『秋の花』「エリナーの肖像」のように、生きている人たちが思い出すことによって、すでに死んでしまった者が生き生きと立ち現れてくる物語でもあります。こういうタイプの作品て好きなのです。

 とうとうカラスもレギュラーになってしまったか。「たーんとお食べともお」に出てくるのは、カラスたちまで個性的だ。

 カラスがレギュラーになった代わりにというわけではないのだろうけれど、本巻ではスポーツ大佐の出番が少ない。というかスポーツ大佐ってすっかりともおが真剣にものを考えるための入口になっちゃったな。「迷宮を抜け出せともお」のスポーツ大佐はもはや脇役よりも扱いが小さい。おまけページも刺客がメインだし。

「当座の目標が大事だぜともお」の実習生ははたして〈いい先生〉という役どころなのだろうか? 知らず子どもに負担を強いることに気づいてないダメな先生なのだろうか? 子ども視点で読むとケリ子の健気さがメインなんだけれど、大人視点で読むと「できなかった子がいた時の事も考えておきなさいよ」という担任に向かって平然と「平気ですよ」と答える実習生に薄ら寒いものを感じた。何も考えず読んで大笑いすることもできるんだけど、ちょっと考えさせられちゃうところもあるのがこの漫画の魅力の一つでもあります。

 それにしても意地でも父さんの顔を見せないテクニックと設定に感心。
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団地ともお 6
小田 扉
小学館 (2005.12)
ISBN : 4091872360
価格 : ¥530
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 翻訳小説サイトロングマール翻訳書房


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