翻訳家・岸本佐知子氏のエッセイ集。北村薫編『北村薫のミステリー館』[bk1・amazon]に収録されているのを読んで以来、絶対に買おう!と思っていた本がこのほど新書化されたのでさっそく購入、読みました。
『ミステリー館』に収録されていた二作はどちらかといえば幻想風のものでしたが、本書に収められているのは、ズレた感覚を幻想風に綴ったものから面白エッセイ風に綴ったものまでさまざまで、しっとり浸りたい人もけらけら笑いたい人も楽しめる。共通点は「どこかヘン」。
いちばん笑っていちばんお気に入りなのはこれ。「私には、ロールシャッハ・テストの絵がどれも「骨盤」に見えるのだが、異常だろうか」。たしかに骨盤です(^^)。間違いありません。
子どものころに月に懐中電灯の光を当てようとしたり、新幹線の“鼻”には何が入っているんだろうと悩み抜いたり、まっとうすぎるくらいに率直な(それでいて虚を突かれるような)発想をスタート地点にして、癖になるような味のある文章にするのがうまい。あれよあれよと別世界に連れて行ってくれる。地上十センチくらいに浮いているさくらももこ。
Uブックス版ボーナストラックとして、『ユリイカ総特集 川上弘美読本』掲載のエッセイを収録。これがまたぴったり。川上弘美が書くような作品を、川上弘美に向けて自分の文章で書いてしまえる。才能です。
『ミステリー館』の解説対談で北村氏が述べているように、岸本氏が新聞連載していた書評も本にまとまってほしいものです。
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