『十八時の音楽浴 漆黒のアネット』ゆずはらとしゆき/海野十三原作(小学館ガガガ文庫)★★☆☆☆

 跳訳シリーズ第一弾。『脳Rギュル』が面白かったので、順番が前後するがこちらも読んでみる。

 ライトノベル化といっても本書の場合、昭和初期探偵小説風の文体なので、読みづらい。いや読みづらくはないのだけれど、非常に読み心地が悪い。試みは面白いのだけれど、ものになっていないというか内容と合っていないというか。

 とはいえ文体のほかは、「アニメ絵」ならぬ「ラノベ絵」のイラスト、お約束どおりの掛け合いという、保守派ライトノベルです。でも『脳R』とは違って比較的原作に忠実なので、意外性の面白味はありませんでした。本書に関してはあらかじめ原作を読んでおくことはしない方がいいでしょう。

 しかし何で跳訳シリーズは二冊とも少しエロ系なんでしょう?

 原作の「十八時の音楽浴」も読んでみました。海野十三バカミスっぽい帆村ものしか読んだことがなかったので、そんなトンデモSFなのだろうと思っていたのに、けっこうまともでした。少なくとも筒井康隆星新一のおじいさんではある、と思いました。

 はるか未来の学園型国家・ミルキ国では、毎日18時にたのしい音楽を流しています。この音楽を全身に浴びるとあらふしぎ、やる気のない少年少女たちも嬉々として仕事に打ちこんでしまうのですが、そんなすてきな強制装置の開発者・天才美少女博士コハクはヘンテコな発明品とセクハラの数々で、少年大統領ミルキII世を悩ませる小悪魔だったのです……。二つの時間をめぐる全三章で現代の少年少女に贈る、すこしえっちで、すこしふしぎな物語。海野十三の傑作「十八時の音楽浴」「火葬国風景」を翻案した「跳訳」シリーズ第一弾!
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