『旅は驢馬をつれて 他一篇』スティヴンソン/吉田健一訳(岩波文庫)★★★★☆

 『Travels with a Donkey in the Cévennes』『An Island Voyage』Robert Louis Stevenson。

 スティーヴンスンの紀行文『旅は驢馬をつれて』『内地の船旅』の二作を収録。

 『内地の船旅』の方は比較的ふつうの紀行文だけれど、『旅は驢馬をつれて』の方はユーモラスで妙におかしいところが満載です。

 お供の驢馬がいい味だしてるんですよね。愛すべき駄馬。中盤からはめっきり出番が減ってしまうのですが、それだけにページに「モデスティイヌ」の名を探すのが楽しみでした。

 「犬くらいの大きさ」しかないこの驢馬は、「その足取りがどんなものだったかは、何と説明したらいいか解らない。それは歩くことが駈けるのよりも遲いのと同じくらいに、歩くのよりも遲いのだった」という、旅のお供にはおよそ適さない駄目っぷり。

 もっとも、要領が悪いのはスティーヴンスンの方も似たり寄ったり。通行人に道を聞いたら意思疎通が出来なくて目的地の反対側に到着したり、道を教わって出かけたはいいけれど元に戻って同じ人に同じ道をたずねなおしたり。

 そんな要領同様、文章だって真っ直ぐじゃない。乞食に出会ったって、「これが私がこの旅行で會った、最初で最後の乞食だった。それが何を意味するかは別として、とにかく事實である。」とひとこと多いのです(^_^)。

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