『最後の錬金術師 カリオストロ伯爵』に続いて、本書を読み返してみることに。こちらは主にジョヴァンニ・バルベリ(マルチェッロ神父)の『カリオストロの生涯と行状』を軸に、それを批判的に読んでいくといった内容でした。そもそも『生涯と行状』という書物が、キリスト教側からのフリーメーソン批判という面も備えているため、著者はおのずからそういったフィルターをはずして見てゆくことになるのですが、そうした作業を通じて結果として「神秘家」カリオストロを浮き彫りにしようと(?)する姿勢が面白いと感じました。教会側からすると、「魅力的」なフリーメーソンの教義を公にして批判することはできないために、カリオストロの不可思議な面を表に出さざるを得ないという指摘には首肯できます。
頸飾り事件に関しても、ジャンヌ・ラ・モット一味の「単独犯」ではなく、ブルトゥイユが裏で図面を引いていた政治闘争であった可能性が前面に押し出されていました。そのほかジャンヌ一味の一人レトーが事件前にカリオストロと会っていたかもしれないという説まで示唆されており、全体的に謎めいたカリオストロ像が描かれた作品でした。
ジャンヌやニコールのその後についても書かれているので野次馬的な好奇心も満足させられました。