『Nemuki+』2016年7月号、『ひとりぼっちの地球侵略』10、『レディ&オールドマン』1

『Nemuki+ ネムキ・プラス』2016年7月号(朝日新聞出版)

百鬼夜行抄』113「身中の虫」今市子
 ――律は卒論と進路で悩んでいた。参考にしようとした卒業生の論文はページが欠けていた。雨に降られて熱を出してしまった律は、開の言葉や青嵐のことで頭がぐるぐるになる。そんなとき、尾白がお別れを告げに来た……。

 青嵐が御法神ではなくなってから、話に絡むこと自体が減ってしまいました。そのうえ今度は尾白が……? ハラハラさせます。
 

「薄闇の鳥籠」岩崎ネリ
 ――その国では国王が変わると跡目争いを避けるため、親族たちは鳥籠の部屋に一生閉じ込められた。後宮から出られないエメルは兄に会いに夜中だけ鳥籠を訪れ、小さな窓から話をしていた。世には空から消えた星を拾いに行く「星乞い」と呼ばれる者がいるという。外の世界を恋うエメルは、星乞いに憧れていた。

 2014年5月号掲載の「血糊先生と指紋ドロボウ」とは違いシリアス一辺倒の内容でした。「ああやっと忌々しい陽が沈むのね」という言葉に表われているとおり、これは夜の世界と幻想を愛するネムキ読者に相応しい作品です。
 

「こんな私がスリランカでゲストハウス」東條さち子
 ――土台をつくり壁をつくり始めたが、すべてが「スリランカスタイル」、とてもではないがまかせてはおけない……!

 相変わらずのマイペースで、はたから見ている分には面白くて仕方がありません。
 

ニートが三途で問われたら」内田麻美
 ――家を出たところでトラックにはねられたニートの修吾は、あの世とこの世のどちらを選ぶかをバラエティ形式で決める三途の川にたどり着いていた。

 ニート、恐るべし。赤い酋長の身代金ですね。
 

『伊集院月丸の残念な霊能稼業』「贄 I」魚住かおる
 ――黒田さんの実家を訪れたみちる。黒田の妹・沙綾は子どものころに近づいてはいけない池に近づいてしまったことがあった。それ以来、黒田は沙綾のことを注意して見ていたのだが。沙綾の同級生も池に近づいたことがあった一人だった……。

 前編です。前回は武衛とエロひげの大活躍の回でしたが、今回は通常に戻って黒田とみちる(+エロひげ)の回でした。
 

『未知庵のきなこ体操』「美」
 ――ああ、美しくなりたい。百日参りの噂を聞いたえり子は、毎日午前三時におにぎりをお供えするようにした。

 「ウホー」のページの狂気ぐあいが神がかっています(^^。
 

『ことなかれ』3「革仔玉」オガツカヅオ画/星野茂樹原作
 ――貯水池の水質を調査していた調査員二人がバラバラ死体で発見された。ヘッドホンのジャックを近づけて霊の声を聞くことのできる大葉しずくが、明日香の紹介で現場を訪れた。そこに地元名家の当主が現れ、すべては一族が原因だと告白するのだった。

 せっかくの新キャラなのに、あまり活躍の場がありません。オガツカヅオさんの作品は『りんたとさじ』をはじめ心霊や幽霊の話が多かったので、憑物筋の家系を扱った今回の話は、原作付きという事情が活かされた、著者の新たな面を見ることのできた作品でした。
 

『ひとりぼっちの地球侵略』10 小川麻衣子小学館ゲッサン少年サンデーコミックス
 帯に「交錯する、『兄弟』の因縁、『姉妹』の因縁。」とあるとおり、主に三組の兄弟姉妹の確執が描かれています。なかでも今回特筆すべきは、凪(と王弟)の裏事情が明らかにされたことです。「荒れないはずがない」というマーヤの言葉通りの、衝撃的な内容でした。龍介兄の顔を見たアイラが「あ…」と呟きギュ…と胸を突かれる場面、初めはよくわかりませんでしたが、よく見ると龍介の目に涙が浮かんでいるんですね。改めて著者は可愛い絵柄で残酷なシーンが上手いと感じたのが、病院を訪れた大鳥先輩がアイラに秘密にする約束をする場面です。
 

『レディ&オールドマン』vol.1 オノ・ナツメ集英社ヤングジャンプ コミックス・ウルトラ)
 オノ・ナツメの新シリーズは、アメリカを舞台にした男女二人組の運び屋の物語。当然のことながら『俺たちに明日はない』あたりを連想させますが、そこにひとひねり加えられています。この「オールドマン」の方、100年の刑期を務めあげて来た、というのですが……。サイドカー付きのバイクを走らせる二人の姿に、レトロなかっこよさがありました。わかりづらい描写があるのが気にかかりましたが、コマ割りが雑になったというよりは、描き方を少し変えて進化しているということなのだと思います。

    


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