『新・日本の七不思議』鯨統一郎(創元推理文庫)★★☆☆☆

『新・日本の七不思議』鯨統一郎創元推理文庫

 『New Seven Wonders of Japan』鯨統一郎,2011年。

 『邪馬台国はどこですか?』『新・世界の七不思議』に続くシリーズ第三作。日本の歴史の謎を扱ったものとしては『邪馬台国――』に続く二作目になります。

 一作目が曲がりなりにも謎と意外な真相というミステリの体裁を有していたのに対し、本書は謎自体あってないようなものもあるうえ、半数近くは意外な真相と呼べるものでもありません。また、意外な真相と呼べるようなものが用意されている作品であっても、異説をマイペースに説明しているだけで、ミステリ的な驚きが演出されているわけではありません。
 

「原日本人の不思議」(2010)――日本人のルーツを巡る内容ですが、特に謎があるわけでもなく、意外な真相が用意されているわけでもありません。
 

邪馬台国の不思議」(書き下ろし)――「邪馬台国はどこですか?」で唱えられた邪馬台国=東北説を、皆既日蝕の起こった年と場所によって補強したものです。著者が本当に見落としていたのか、最新の天文学か何かで当時の皆既日蝕のことがより詳細にわかったのかはわかりません。
 

万葉集の不思議」(2010)――史書に記録のない柿本人麻呂の謎と、人麻呂=猿丸太夫という梅原猛説への反論からなる、人麻呂=藤原不比等説です。政治的な装置として作りあげた架空の人物という考えは、聖徳太子や『古事記』などでも見られるよくある説ですが、それを歌人でやって何の得があるのかというところが新機軸でしょうか。万葉集朝鮮語で読めるというトンデモを全否定するのではなく、枕詞のみに着目し、朝鮮語で「同じものが二つ並んだ」を意味する枕詞「石見」が人麻呂終焉の地であるのは、一人二役にも重ねているのでしょう。
 

空海の不思議」(2010)――空海が受戒から一か月という短期間で留学メンバーに選ばれ、たった二年で阿闍梨の位を譲られ、留学期間二十年の予定を二年で帰国し云々といった謎を、空海=中国人説で説明しようとしたものです。空海の超人的エピソードを、その天才や神格化によるものだと解釈せず、そのまんま解釈した結果がそういう説になるというのが逆説的で面白いと思います。

 静香と宮田は実際に付き合っていることがわかって驚きました。てっきりバーテンの松永が邪推しているだけかと思っていたのですが。いつの間に?という謎は、四作目の『崇徳院を追いかけて』で明らかにされているようです。
 

本能寺の変の不思議」(書き下ろし)――なぜ信長は「敦盛」が好きだったのかという謎(?)とその答え(?)ですらないような掌篇でした。
 

写楽の不思議」(2010)――写楽の正体は誰だったのかという、謎からして本書でも最大級にオーソドックスです。正体にしても、能役者斎藤十郎兵衛という定説そのまんま。いきおい謎は、なぜ十か月で姿を消したのかという点に絞られます。お金のために役者絵を描いたものの、そもそも能役者だった十郎兵衛は歌舞伎が嫌いだったから――というのは証明なんてできっこないものの、わからないでもない面白い説でした。
 

真珠湾攻撃の不思議」(2010)――合理的な判断ができない、人殺しが仕方ないなんてことはない、人間は不思議で不可解――と、露骨にまとめに入っていた作品でした。

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