『晴れた日は図書館へいこう ここから始まる物語』緑川聖司(ポプラ文庫ピュアフル)★★★☆☆

 『晴れた日は図書館へいこう』の二作目。
 

「移動するドッグフードの謎」★★★☆☆
 ――図書館の玄関に置かれたドッグフードの缶。誰かが餌付けしているのだろうか? 数日後、しおりは図書館の椅子の下でふたたびドッグフードの缶を発見する。さらに見つかるドッグフード。誰が、いったい何のために?

 発想自体は他愛もないし、ミステリにも有名な類例があるのですが、それでも真相はけっこう意外に感じました。というのは、そのためにそこまでする――という動機と行動の振れ幅が大きすぎて、いくら小学生の浅知恵とはいえ、一歩間違えれば狂気に近い発想に思えたからです。微笑ましいというよりは薄ら寒い。冒頭のモンスタークレーマーのように。
 

「課題図書」★★★☆☆
 ――怪我をして以来ふさぎこんでしまった姪のために、欲しい本をたずねたところ、「わたしの課題図書が読みたいな」とぽつりとつぶやいた。姪と同年代だからと相談されたしおりは、美弥子さんを頼る。

 名前に関するマクラがミスディレクションになっているため、単純な真相でも目くらましになっています。真相の裏には、読書感想文のつまらなさと読書のよろこびがありました。
 

「幻の本」★★★☆☆
 ――白石さんというそのおばあさんは、探してもらいたい本があると言った。作者も題名もわからない。幼いころ、友だちのみどりちゃんと一緒にお兄さんが読み聞かせてくれたファンタジー作品。

 普通に考えればこの真相しかないという内容でした。
 

「空飛ぶ絵本」★★★☆☆
 ――夜道で麻紀ちゃんを見かけたしおりが声をかけると、すごい顔でにらまれてしまった。なぜ――? 風邪を引いたしおりが母親に本が読みたいとねだると、母親は出かけてすぐに戻ってきた。どうやって――?

 安川くん名探偵の巻。
 

「消えたツリーの雪」★★★☆☆
 ――図書館のツリーから綿の雪が消え、代わりに雪のとけた水たまりができていた。

 困難は分割せよ。裏を返せば、組み合わせれば魅力的な謎が生まれるというわけで。
 

「九冊は多すぎる」★★★☆☆――大あわてで「らんぷ亭」から飛び出していった男。すれ違った天野さんによると、「九冊は多すぎる」と携帯で話していたという。「本好きだから、なおさらだ」

 一目瞭然「九マイルは遠すぎる」へのオマージュであることからもわかるとおり、各人各様の推理合戦が披露される、もっともミステリ度の高い作品でした。とはいってもこの作品の「名探偵」はズルをしているのですが……。

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