『ダ・ヴィンチ』2007年1月号 ★☆☆☆☆

★今月のプラチナ本は森見登美彦『きつねのはなし』。ここにきて新刊二冊とはうれしいかぎりだね。

◆特集は「ブック・オブ・ザ・イヤー2006」。いつにもましてひどい。もともと批評性のまったく存在しないという点では類を見ないミーハーな人気投票だったわけなんだけど、今年は特にひどい。人気投票ですらない。ただのベストセラーリストじゃんかよ。わざわざアンケートとる必要なし。『愛ルケ』って、粗筋を読むかぎりじゃ筒井康隆のパロディ小説「小説「私小説」」をさらにパロディ化したような……。そういう意味では意外と笑える話なのかもしれん。コミックもひどいね。ドラマ化・映画化リストだよ、これじゃあ。みんな主体性がないんだねえ。

★「プロが選ぶ今年の3冊」。佳多山大地が『九杯目には早すぎる』『グラックの卵』『天才たちの値段』。最近、佳多山評の内容がわりと普通目でものたりない。大森望が『デス博士の島その他の物語』『イリアム』『どんがらがん』。かなりコアなラインナップのはずなのだが、大森氏が選ぶと、ふしぎと定番といった趣が漂う。なぜかSFマガジン編集長の塩澤氏も飛び入り参加。こちらはマニアックすぎるなぁ……。豊崎由美が『四十一炮』『秋の四重奏』『失われた町』。莫言の新作が出てたんですねえ。三崎亜記は本号にインタビューも載ってました。東雅夫へんしゅーちょーは『安徳天皇漂海記』『アムネジア』『独白するユニバーサル横メルカトル』。平山夢明は意外なことに純文の清水良典も選んでましたぞ。宮崎哲弥が『心にナイフをしのばせて』『日本とフランス二つの民主主義』『誤解された仏教』。ほかに千街晶之夏目房之介呉智英他。
 

★「ヒットの予感」は三崎亜記『失われた町』、森見登美彦夜は短し歩けよ乙女他。

一青窈×しりあがり寿(前編)。

「百年の誤読 舶来編 第19回」岡野宏文豊崎由美
 アトウッド『侍女の物語』、クリストフ『悪童日記』、莫言『赤い高梁』、ハリス『羊たちの沈黙』、カズオ・イシグロ日の名残り

「クマの掌」鈴木志保。「パンジーの花はおじさんに似ている」だってさ(^^)。

『犯行現場の作り方』は、現役建築士が書いた、館の図面。斜め屋敷や十角館が見られる。

◆「ミステリー・ダ・ヴィンチ」2007年隠し玉は、角川書店気分はもう戦争。これは新作ということ? 講談社歌野晶午『密室殺人ゲーム王手飛車取り』集英社古屋乙一兎丸『少年少女漂流記』。詳伝社森見登美彦走れメロス東京創元社サラ・ウォーターズ『The Night Watch早川書房マイクル・ホワイト『イクイノックス』が伝奇とんでもミステリっぽそう。文藝春秋北村薫『玻璃の天』ベッキーさんシリーズ。論創社クイーンほか『ミステリ・リーグ傑作選』、ミルン『パーフェクト・アリバイ』

◆「絶対読んでトクする20冊」。ジャック・リッチー『10ドルだって大金だ』を紹介している中条省平氏って、光文社古典新訳文庫の『目玉の話』訳者だったんだね。へほお。というわけで、初めて執筆者紹介欄を読んでみる。森健氏の著作『グーグル・アマゾン化する社会』が面白そうなタイトル。親書だからタイトルからは割引してかからなきゃならんが。巽昌章氏が若島正『殺しの時間』を紹介、愛川藍氏が酒井順子『都と京』、平野啓一郎『本の読み方 スロー・リーディングを紹介。平野氏って、発言の誇大妄想的なところと若手っていうイメージがどうしても清涼院チルドレンとかぶってたんだけど、はじめて面白そうと思える作品。

◆表紙&インタビューは中島みゆき

●次号はTEAM NACSだぁ。いつのまにか洋さんだけじゃなくみんな全国区になってたのね。
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