『月蝕島の魔物』田中芳樹(理論社ミステリーYA!)★★★☆☆

 まだこの〈ミステリーYA!〉は二冊しか読んでいないけれど、ちょっと当たりがない。『キューピッド涙盗難事件』は装幀がよかったけれど内容はイマイチ。本書にいたっては、どうしても同じ著者の〈ミステリーランド〉作品と比べてしまう。値段以外は完敗ではなかろうか。

 シリーズロゴの、猫マーク=家と道マークはお洒落だけど。

 『ラインの虜囚』にデュマが出てくるのは何となく『三銃士』がらみでわからんでもないけど、本書のディケンズアンデルセンは、ただ出てきただけって感じだもんなあ。

 日本人にはあまり知られていないヴィクトリア朝の現実を紹介することに筆が割かれるのは仕方がないにしても、第二部からはそこははしょることができるはずだから、次作に期待かなあ。

 ホラーたる所以のものは、実際の伝説なのかクトゥルーか何かなのか著者のオリジナルなのか、わたしにはわかりませんでした。

 1857年、ヴィクトリア朝のイギリス。当時、世間をにぎわせていたのは、スコットランド近くにある月蝕島《ルナ・イクリプス・アイランド》の沖で氷山に閉じ込められた謎の帆船が発見されたというニュースだった。

 そんな中、クリミア戦争から奇跡的に生還したニーダム青年は、姪のメープルとともに、大手の会員制貸本屋で働くことになる。ある日、社長から言い渡された特命は、作家アンデルセンディケンズの世話をすること。超マイペースな二大文豪に翻弄され、きりきり舞いのニーダム青年をさらなる試練が襲う。なんと、ジャーナリズム精神あふれるディケンズが、月蝕島へ行くと言いだしたのだ。かくして一行は不吉な噂に満ちた月蝕島へ向かうのだが……。(カバー袖あらすじより)
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