豊田徹也氏の読み切りが掲載されていたのであわててバックナンバーを購入。探偵さんの話です。「ミスター・ボージャングル」。山崎のもとに持ち込まれた依頼は、幼いころ隣に住んでいた「ボーさん」というおじさんを探して欲しいというものだった……。ボードビルの芸人に憧れていた男が「ミスター・ボージャングル」の歌詞のように「とても高く跳ん」でいきました。
「無限の住人」。三節棍VSヌンチャク。一見シブそうな対決なのに沙村氏が描くと途端にダイナミックです。
「ぷ〜ねこ」。以前に読んだときはシュール系の漫画かと思ったのですが、今回のはギャグ漫画でした。
「BUTTER!!」は、番外編で二人の出会い。
「臨死!!江古田ちゃん」は、ドラマ版主演の鳥居みゆき×作者の対談つき。タイトルバックのイラストも鳥居みゆき(を演じる江古田ちゃん)バージョン。
「ぼくらのよあけ」は、今井哲也氏の短期集中新連載。どうやらSFらしい。
「おおきく振りかぶって」は本篇が休載中でも、一ページの番外編が掲載されているんですね。番外編2回目は、西広の野球部入部のきっかけ。
「ライカライカ」は、山崎廉氏による四季賞特別賞受賞作の新作読み切り版。だけど、線の細いタッチが魅力的な絵柄だったのに、輪郭線も太く顔も漫画っぽく若干デフォルメされてしまっていて、魅力が減じてしまいました。できれば四季賞のときの絵柄に戻ってほしいです。
「雑草女」「ハトのおよめさん」「闘え!!父さんチョップ」「カラスヤサトシ」のギャグ連はいつも通りの安定感。
「百舌谷さん逆上する」。「葛原さん襲撃する」。クラスの女子の名前がオカルト系の方々から取られていることに、最近になってようやく気づきました。だからゴシマじゃなくてゴトウなのかあ。大槻さんが仲が悪いという設定には笑った(^_^)。百舌谷・鴫沢一族の名前は「鳥+地形」だし、すると鳩山先生も実は遠い親戚という設定なのかも?とちょびっと思いました
「からん」。第6巻の次巻予告によると第7巻で完結らしい。どう考えても伏線を回収し切れないだろうし、打ち切りなのかなあ。自由度の高すぎる漫画ではあったけれど。というわけでこの回ではもう京が金春と渡り合ってます。
「弾丸ティアドロップ」は次号で最終回。
◆四季賞受賞作の別冊付録付き。
「二人の記録」みやあやた。大賞。魔法の世界の住人が自分のスキルを役立てようと、ナチスの作業所に現れる――という説明から受けるであろうようなファンタジー漫画ではありません。リアルなタッチの人間たちに対し、徹底的にマンガチックに描かれた魔法使い。その魔法はほとんど役に立たないどころか、魔法使いすらほとんど空気のような存在で、何かが変わる触媒にすらなれていません。こういう極端な第三者の視点の導入によって、無力感ややりきれなさがくっきりと浮かび上がり、また自分の行動が善と信じて疑わない行動的な魔法使いの思いが、割り切れることばかりではない現実を際立たせ、それでもマンガチックな絵柄のために説教臭くならないというアクロバティックな傑作でした。
「異国息子」星すばる。四季賞。かつて大量破壊兵器を開発した罪滅ぼしに、人間らしいロボットを作り、家族のように暮らしていたが……。ロボットと人間らしさ、という普遍的で手垢のついたテーマを、「手」に焦点を当てて描いたハート・ウォーミング・ストーリー。
「オアシス論」「日陰の氷」山下竜一。かわぐちかいじ特別賞。料理好きなためキモがられてしまった三ツ間は、避難していた保健室にいた大久保さんのことが好きになる(オアシス論)。法医学部のアルバイト伊丹は、「アイスマン」と揶揄される池家助教授の解剖を手伝うことに(日陰の氷)。「オアシス論」では、自意識の肥大化したオタク高校生男子の見栄っぷりが、モノローグや台詞や行動だけでなく、数学0点なのに自室の壁に「東大」とか貼り紙してあるところにまで描かれていて芸が細かい。むしろ誰の目にも触れない自室でさえ虚勢を張っちゃうところが一番それらしいかも。オタク過ぎてどうなることかと思いましたが、やがて不良が現れたことで変化が訪れます。「日陰の氷」は死体解剖と妊娠(堕胎)から死と生の問題が描かれる、一見わかりやすい譬喩のようでいて、でも実は解剖と妊娠というのは意外な組み合わせだったりします。
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