『Limehouse Nights』Thomas Burke

 トマス・バークの作品はこれまで「オッターモール氏の手」と「黄金の銅鑼」しか読んだことがありません。それでいて乱暴を承知で二つのどちらに似ているか、と言うならば、「黄金の銅鑼」に近い作品です。チャイナタウン(ライムハウス地区)と中国人の出てくる人情譚。

 なぜか本書は『クイーンの定員』に選ばれています。

「The Chink and the Child」は「シナ人と子供」の邦訳もある、リリアン・ギッシュ散り行く花』の原作だそうです。

「The Father of Yoto」は、妊娠した子どもの父親は自分だと言い張る人たち……の純愛譚といっていいのかな。

「Gracie Goodnight」という女店員の話。ようやくミステリっぽい――というか、結末にいたって犯罪小説になるのです。

 悪くはない。けれど、ひとまずここまで。

  


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