『午前零時のサンドリヨン』相沢沙呼(創元推理文庫)★★★☆☆

 鮎川賞受賞のデビュー作。ほかの作品を何篇か読んだかぎりではセンチメンタルで落ち着いた作風だと感じていたので、ジュヴナイルやラノベのような一人称に驚きました。

 推理小説の探偵というのははいったいエラそうに何様のつもりなんだ、という批判がときにありますが、本書の場合には開き直って説教をすることにも何がしかの必然性がありました。自分の過去を振り返って、魔法使いになりたい=誰かを助けたいという切実な思いがそうさせているんですね。語り手のポチくん含めて正直言ってクサくてイタイのですが、それも高校生だと思えばアリなのでしょう。

 もちろんマジックは魔術ではないわけで、それですべて解決できるとしたらご都合主義もいいところなのですが、三話目と四話目でそのあたりはクリアされていた、と思います。四話目は言葉で語るのではなく、事実そのものを目の当たり(?)にされたために、説得力がありました。

 ……というわけで、語り手とヒロインの都合のいい恋愛と、解決編にともなう説教に、ちょっとシラけてしまいました。それがなければ……。

 ポチこと須川くんが一目惚れしたクラスメイトの女の子、不思議な雰囲気を纏う酉乃初は、凄腕のマジシャンだった。放課後にレストラン・バー『サンドリヨン』で腕を磨く彼女は、学内の謎を抜群のマジックテクニックを駆使して解いていく。それなのに、人間関係には臆病で心を閉ざしがち。須川くんは酉乃との距離を縮められるのか――。“ボーイ・ミーツ・ガール”ミステリの決定版。第19回鮎川哲也賞受賞作。(カバー裏あらすじより)

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