『大正の怪談実話ヴィンテージ・コレクション』東雅夫編(メディアファクトリー幽BOOKS)★★★☆☆
本書も収録作も一応は「怪談実話」とは謳っているものの、どう考えても実話じゃなさそうなものばかりでウケました。初対面の人に妻の不倫を打ち明けちゃったり、狸憑きが伝染したり、『怪談 不思議物語』にいたっては神田伯龍の講談ですからね。怖さなんて微塵もない作品ばかり。
『西洋の怪談』は実話に基づくデフォー「ヴィール夫人の幽霊」と、作者不明(恐らく訳者の創作)「船幽霊」。
怖いという点では『変態心理』の座談会のいくつかが怖かった。参加者の生の声なので、飾り気のない怖さがあります。怪異でも何でもないただ単に怖い話も混じっていますが。「冒険小説でも、探偵小説でも、非常に科学的に内容は進んで居りますね。妖怪談もそういう意味に於て、進んで行き得るではないですかね。」という発想が面白い。そこで「心霊問題」になっちゃうのが時代だけど。
『うたう百物語』佐藤弓生(メディアファクトリー幽BOOKS)★★★★☆
『幽』連載に書き下ろしを加えてきっかり全九十九話に完成させた短歌+掌篇集。
「二十年前のタキシイドわれは取り出でぬ恋の晩餐に行くにもあらず」前川佐美雄に添えられた掌篇のように、本歌から微妙にずれた視点の怪談がよい。