『明治の怪談実話ヴィンテージ・コレクション』東雅夫編(メディアファクトリー)★★★☆☆

 大正・昭和篇に続き、明治篇にて完結。

 今回の目玉は、きっちり百話ある『古今実説 幽霊一百題』(百蛇園主人 左右田秋満編)。しかもタイトルの通り幽霊譚ばかりです。※癩病の記述がある第五話だけ割愛だそうです。さすがに幽霊話ばかりじゃ因果話みたいなのばかりになってバリエーションに限界があるだろうと思ったのですが、なかには面白いものもありました。

 例えば第四「幽霊食物に毒薬を散布す」。直接祟れよ!と思ってしまいますよね。呪いではなく毒によって復讐を為す幽霊は異色でした。

 ほかに第二十六「硝子障子外に幽霊徘徊す」。これは何と言っても、刺された首がほとんど切断されてブラ下ったまま徘徊する幽霊のビジュアルに尽きます。

 第三十八「強力却って身を滅ぼすの基いとなる」。いかにも説話っぽく、実際『中研翁随筆』という写本に同話があるそうなのですが、この随筆がまず実在するのかどうか。驕れる力自慢が力比べに負けるだけならよくある話ですが、この力自慢は自分が一番でいたいがために、不意を突いて相手を殺してしまいます。そして化けて出た相手に「拳を固め打ち」するという暴挙(?)! 幽霊はその後もたびたび出没するものの、幽霊に祟り殺されたりはせずに無事畳の上で死ねたようです。

 第五十一「炒芥子に芽を生ぜし菊寺の懸燈」、これも「その後」が普通じゃありません。針仕事の針を茶碗に落としてしまった召使いが、殺意を疑われ奥方に殺される――ところまではよくあるのですが、娘が殺されたのを知った召使いの母親が復讐のために呪いをかけ、それを知った奥方が反対に母親を殺し、結局は召使い親子の幽霊に一族根絶やしにされるという……どこでどう間違ってそこまで大ごとになってしまったのかと思うような大スペクタクルでした。

 ほかに「妖怪談」「日本妖怪実譚」「西洋妖怪実譚」「実歴怪談」「竹の間の怪」「丸善怪談」『花柳界 おまじないと怪談』『新百物語』を抄録。

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