『処刑人』シャーリイ・ジャクスン/市田泉訳(創元推理文庫)★★★★☆

 『Hangsaman』Shirley Jackso,1951年。

 空想癖のある少女、新しい環境の洗礼、人に言えない過去、独善的な父親、憧れの教師……道具立ては王道の少女小説ですし、作品を覆っているある種の息苦しさはまさに少女時代特有のものだとも言えます。自分の世界に逃避している様子からは『ずっとお城で暮らしてる』を連想しましたが、翻って、思春期とは自分だけの世界に閉じ籠もるものだと考えるなら、『ずっと――』も本書も大差ないのかもしれないと思いました。ごく当たり前の少女という状態が、逃げ場がないまま肥大化すれば『ずっと――』になりえるのかも……とさえ思ってしまいました。

 深緑野分による解説・分析が秀逸です。

 皮肉屋で独善的な文筆家の父と、人生への希望を失った母の元を離れて大学の女子寮に入った17歳のナタリー。息詰まる家を脱出した先に待っていたのは、理解不能な同級生や高慢な上級生たち。ただ一人、トニーという風変わりな少女だけは他と違っていた。彼女なら、どこまででもあたしを連れていってくれる……。思春期の少女の心を覆う不安と恐怖、そして憧憬を描く幻想長編小説。(カバーあらすじ)
 

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 処刑人 

「メルカトル・ナイト」麻耶雄嵩(『メフィスト』2019年vol.3)

「メルカトル・ナイト」麻耶雄嵩 ★★★★☆
 ――作家の鵠沼美崎のところにトランプのカードが毎日一枚ずつ送られてきた。美崎のイメージカラーの赤に合わせて、ダイヤのKからカウントダウンされ、もうすぐハートのエースが近づいていた。不安を感じた美崎はメルカトルに相談した。念のため自宅を出て泊まっているホテルの隣の部屋で寝ずの番をすることになった美袋を尻目に、メルカトルは酔っ払って寝てしまった。何事もなく夜は過ぎたように思えたが……。

 メルカトル鮎シリーズの最新作。古典的で単純なネタ【ネタバレ*1】が用いられていますが、メルが犯人の計画に乗っかっているため真相に至るのがむずかしくなっています。なぜメルが乗っかるのかと言えば、相変わらずの鬼畜な理由でした。
 

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 メフィスト 2019年vol.3


 

 

 

 

*1※自作自演の被害をアリバイにしてライバルを殺しに行こうとする

 

『幻想と怪奇』2【人狼伝説 変身と野性のフォークロア】(新紀元社)

 表紙イラストは第1号に続きひらいたかこですが、普段の作風とは違い狼がリアルなので気づきませんでした。

「A Map of Nowhere 02:「人狼」のハルツ山地」藤原ヨウコウ

人狼映画ポスター・ギャラリー」

人狼野村芳夫

人狼(『人狼ヴァグナー』第十二章)」ジョージ・W・M・レノルズ/夏来健次(The Wehr-Wolf (Wagner, the Wehr-Wolf, Chapter 12),George W. M. Reynolds,1846)★★☆☆☆
 ――森の中で一人の若者が悶えのたうっている。見目よかった顔が縦長にのび、麗しかった衣装が粗い毛の密集した獣皮に変わり、一匹の巨軀の狼が出現していた。人狼はすさまじい速さで森を駆け抜け、たちまちのうちに開けた平原に出た。歩いていた僧は凶暴な怪物の通過による剛力に突かれて倒れ込んだ。

 これはさすがに歴史的価値しか感じられませんが、疾走感はなかなかのものでした。
 

「狼人間」リーチ・リッチー/森沢くみ子訳(The Man-Wolf,Leich Ritchie,1831)★★★☆☆
 ――ケリドルーの騎士は美しいベアトリクスを愛していたが、生来の直情型ゆえに侮辱されたと思い込み、別の女と結婚した。妻を捨てベアトリクスを娶るという罪を抱いたせいで、夢で見たとおり狼に変身してしまった。ケリドルーの奥方は神父と謀り、狼に変身した騎士の衣服を隠して人間の姿に戻れないようにしようと企んだ。

 二人の神父が牽制し合っていつまでも行動を起こせないところや、処分した衣服が戻ってくるところなど、スラップスティックの味わいがありました。人狼とは言いつつホラーというよりは、ドタバタ中世騎士道物語です。
 

「黄昏に立つ母は狼」澤村伊智
 エッセイのタイトルは比嘉姉妹シリーズの没ネタより。読みたかったけどなあ。
 

「ランニング・ウルフ」アルジャーノン・ブラックウッド/岩田佳代子訳(Running Wolf,Algernon Blackwood,1920)★★★★☆
 ――ハイドはカナダの森に魅せられた。面白いように魚が釣れるため止め時を失い、いつしか闇夜になっていた。焚き火の向こうに気配がする。森林狼だ。燃え木を投げつけても逃げ去ることはなく、朝になっても座っていた。釣りを再開しても、狼は見つめていた。この態度は犬、いや、まるで人間じゃないか。興味を惹かれたハイドが近づいてゆくと、狼はゆっくりと歩き出した。ハイドがついてきていることを確かめながら。狼は茂みの中に入り、地面を掘るしぐさをした。

 新訳。ブラックウッドという人は作風の幅が広いというか、とらえどころがありません。人骨が出てきた時点でおぞましい話になるのかと思いきや、先住民の言い伝えにまつわる骨太な作品でした。
 

「ある探検家の死」H・R・ウェイクフィールド/植草昌実訳(Death of a Poacher,H. Russell Wakefield,1935)★★★☆☆
 ――元精神科医の私は、友人に頼まれサー・ウィロビーの症状を確かめることになった。サー・ウィロビーはヴァンパイア伝説に惹かれ、アフリカでマサイ族の居住地を訪れていた。マサイは勇敢だがハイエナだけは怖れていた。シマウマの群が殺到したため狩りに出ると、あちことによくわからない痕のついたシマウマの死骸が転がっていた。見たことがない四本指の大きな足跡を見つけると、マサイの案内人たちの姿が消えていた。突然現れた虎ほどもある巨軀のハイエナを撃つと、倒れた巨獣は消え去り、そこに肌の黒い大男が現れた。

 狼ではなくハイエナというだけで不気味さが倍増します。何かの呪いなのかもともと棲息する化け物なのか、正体が不明なままなのも不安を誘います。
 

「屋敷の主人」オリヴァー・オニオンズ/高澤真弓訳(The Master of the House,Oliver Onions,1929)★★☆☆☆
 ――地所の所有者レイバンは、自分と従者とシェパードの平穏な生活に一切立ち入らないことを、その家を貸す条件にしていた。アンドリュー、ミッキー、イヴの三兄弟はいぶかりながらも借りることにしたが、兄が何か隠していることにイヴは気づいた。夕食に招待されたレイバンは非常識にも飼い犬も同席させた。ミッキーがレイバンの従者がインド帰りかどうかをたずねた途端、レイバンの表情が変わった。

 長めなのになかなか何も起こらないのでダレます。ただ単に変身するのではなく、入れ替わるという発想が新鮮かつ不気味でした。
 

菊地秀行インタビュー 銀幕の人狼たち」
 菊地秀行の思い出話がそのまま人狼映画の紹介になっています。
 

「魔犬」フリッツ・ライバー中村融(The Hound,Fritz Leiber,1942)★★★☆☆
 ――デイヴィッドがオフィスに行きタイムカードを押すと、受付嬢が顔をあげ、「あなたの犬の分も押さないの?」とのたまった。「犬だって? 犬なんて見当たらない」。デイヴィッドはトム・グッドセルに会いに行った。「現代都市の超自然的存在だって? たしかに、それは昔日の幽霊とはちがうだろう。それぞれの文化が幽霊を生み出すんだ。中世の大聖堂に灰色の影がうろついたのと同じことが、摩天楼や工場にも起きるだろう」。人狼の影を感じはじめたデイヴィッドは、都市から逃げ出すことにした。

 同じライバー「煙のお化け」のように、本作品でもまた都会の幽霊が描かれています。なるほど現代の都会で怪物ではない狼と触れるには動物園しかなさそうです。
 

「ピア!」デール・C・ドナルドスン/野村芳夫(Pia!,Dale C. Donaldson,1969)★★★★☆
 ――ハッチの主催するパーティにわたしは妻のマチルダと参加した。ハッチのボスである老ダントンが、オカルティストのチーヴス博士に命の危険があると警告された話をしていた。金目当てで結婚した若いピア・ダントンが「つまりわたしたちのなかに精霊がいると?」「より正確に言えば人狼だ!」。閉じ込められたわたしたちはどうにかしてチーヴス博士に助けを求めようとしたが、

 訳者が発掘した作品で、意外な拾いものでした。「変種第二号」『11人いる!』etc. 目指すべき相手を身内から探す疑心暗鬼のサスペンスは、読んでいる方も緊張感が途切れません。しかも【ネタバレ*1】というサービスぶりでした。
 

「闇はもう戻らない」ジェイムズ・ブリッシュ/植草昌実訳(There Shall be No Darkness,James Blish,1950)★★★☆☆
 ――ポール・フットは確信した。ニュークリフ家のパーティには怪物がいる。ピアニストのヤーモスコウスキの目が満月の下で赤く光っているのを見て問い詰めると、狼の姿になって姿を消した。精神科医のルンドグレンもフットの言い分を後押しした。狼憑きというのは松果体の病気であり、魔女の存在を利用してことを有利に進めるという。銀の弾丸を用意して仕留めることになった。

 パーティのなかに人狼がいるという設定は「ピア!」と共通しますが、こちらは正体がはっきりしています。人狼の特徴をこれでもか!というくらいに盛っていながら、【ネタバレ*2】という特徴をうまく言い落としているため意外性も生まれていました。人狼を狼憑きという病気だとしながら、体細胞も変化するし衣服も一緒に変化するというトンデモ説明をしたせいで、結局なんの説明にもなっていません。
 

「昼に着るのはドレスがいい 夜にあるのは牙が良い」斜線堂有紀

「森になる」井上雅彦

「老人とオオカミ」安土萌

「ゴミ箱をあさる」ニーナ・キリキ・ホフマン/田村美佐子訳(Dumpster Diving,Nina Kiriki Hoffman,1995)★★★☆☆
 ――あたしが仔犬好きだったらねえ。ゴミ収集箱の暗がりに、足をじたばたさせている生きものを見つけて、クレアはつい情がわいてしまい、コートのポケットにすべりこませた。明日、動物愛護協会かなにかに連れて行けばいいだけのことだ。翌朝、仔犬の姿はなかった。かわりに抽斗の中で丸くなっていたのは、ちいさな人間の赤ん坊だった。

 ブラム・ストーカー賞ネビュラ賞受賞作家。世界幻想文学大賞の候補に挙がったことも。夫にDV(というか洗脳)を受けていたという設定が現代的です。犬嫌いだと思い込まされていた夫を(たぶん)殺したあとで、子犬(人狼の子)を拾うという流れを見ると、まるで成長物語のようでもあります。
 

「おじいさまの画帳」スティーヴ・ラスニック・テム/圷香織訳(Grandfather Wolf,Steve Rasnic Tem,2010)★★★☆☆
 ――おじいさまは居間の椅子に座り、裏庭の芝生を見つめていた。「おじいさまは、絵を描くの?」アビゲイルが画帳を見つけて開いた。「おじいさま、上手ね!」「鍛錬を積んでいるからな」「教えて、おじいさま」。たちまち紙の上にハチドリ、キリン、ゴリラの姿が現れた。「今度は狼よ」「狼は描かないことにしているのだ」。アビゲイルは、おじいさまの肌が波打つのを感じた。チクチクしたものが、指の腹や手のひらを刺した。

 人狼の祖父が家族と過ごすために選んだこと。
 

「海外人狼小説リスト」

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*11人だけじゃない

*2伝染する

『鬼神伝 鬼の巻・神の巻』高田崇史(講談社ミステリーランド)★★★☆☆

 ミステリーランドの第3回・第4回配本です。〈きじん〉ではなく〈おにがみ〉と読むのですね。

 平安時代にタイムトリップさせられた中学生の天童純は、雄龍霊(オロチ)を操れる一族の末裔であることを見込まれて、藤原基良らから鬼退治を命じられます。しかし純は「鬼」を殺さなくてはならないことに疑念をぬぐえません。やがて戦いのさなか、鬼の娘に出会い……。

 平安時代や鬼神といった題材だけなら伝奇小説のようですが、そこは少年少女のためのミステリーランドですから、さほどドロドロしてはおらず、どちらかといえばヒロイックファンタジーに近いです。少年の感情の高ぶりによってオロチが目覚め、少年が手に取ると草薙剣が光を帯びる場面などは、まさに少年誌のヒーローです。

 高田氏らしく、記紀神話や各種の鬼退治物語に独自の解釈を加えているところに特色があります。天つ神と国つ神の構造を、支配者である殿上人とまつろわぬ「鬼」や、仏教と土着の神、といった構造に重ねているところなどはいかにもそれらしい。

 謎解き度はさほど高くなく、『鬼の巻』の足跡のない殺人や、『神の巻』の裏切者さがしと、あとがきの暗号くらいです。

 現在は第三作『龍の巻』も出ているようです。

 京都の中学に転校してきて三ヵ月、天童純に友だちはいない。純の胸には生まれた時から赤紫色のふしぎな形をしたあざがあった。ある日、いじめっ子に追いかけられるうち、純は東山の麓ふかくに建つ古びた寺に迷い込み、密教僧・源雲によって時空を超え平安の都に飛ばされてしまう。胸に勾玉の形をしたあざがある純こそ封印された龍・オロチを解きはなち、鬼を退治するべく選ばれた者だという。桃太郎、一寸法師……。彼らはなぜ鬼を退治するのか。鬼とはいったい何者なのか!?(『鬼の巻』函あらすじ)

 現代に戻った天童純が、今まで自分の身に起こったことが全部夢だったのではないかと疑い始めたころ、純は六道珍皇寺に現れた小野篁によって平安時代に呼び戻され、再び鬼神たちとともに貴族との戦いに加わることになった。一方貴族は、鬼神たちを封じ込めるために三種の神器を揃えようと、最後の一つ、純の持つ剣を血まなこになって探していた。とてつもない破壊力を持つ「弥勒」を招致しようとする貴族たちとの激しい戦いの中、純は今まで一緒に戦ってきた仲間を失う。素戔嗚尊の血を引く純が、命よりも大切なものがあると気づいたとき……。(『神の巻』函あらすじ)
 

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『S-Fマガジン』2020年6月号No.739【英語圏SF受賞作特集】

「鯨歌」劉慈欣/泊功訳(1999)★★★☆☆
 ――麻薬組織のボス・ワーナーおじさんは考え込んでいました。ニュートリノ探知機が発明されてからというもの、アメリカに密輸しようとした麻薬がことごとく見つかってしまうのです。アメリカで勉強していた息子が天才を見つけてきました。海洋生物学者のホプキンズ博士は、鯨にボートをくわえさせるアイデアを提案しました。

 『三体』の著者のデビュー作。ですます調の文章によって童話っぽくなってしまったせいで、奇想天外なはずのアイデアにもあまり驚けません。道徳なしの皮肉なオチはよかった。
 

英語圏SF受賞作特集】

ジョージ・ワシントンの義歯となった、九本の黒人の歯の知られざる来歴」P・ジェリ・クラーク/佐田千織訳(The Secret Lives of the Nine Negro Teeth of George Washington,P. Djèlí Clark,2017)★★☆☆☆
 ――ジョージ・ワシントンのために購入された一本目の黒人の歯は、死んだ鍛冶屋のものだった。聞いたところによると年長の奴隷たちがアフリシーと呼ぶ土地では、大地から鉄を取り出して火と魔法で加工する鍛冶屋は崇拝の対象だったという。ここ、バージニア殖民地では、首に留める首輪、手足にはめる枷、口輪をつくらされていた。

 小さな物語。ベタな着地。ポーカーフェイスのホラ話は読むのがいたたまれなくなります。
 

「ガラスと鉄の季節」アマル・エル=モータル/原島文世訳(Seasons of Glass and Iron,Amal El-Mohtar,2016)★★☆☆☆
 ――タビサは四足目の鉄の靴を履いて山を登った。アミラは誰も登れないガラスの山の頂にいた。山を登った男だけが娶ることができる。二人の女は山の頂で出会った。「熊と恋に落ち、裏切ったために、あたしは靴を七足履きつぶさなくちゃならないの。この山は靴底が早くすれそうだったから」

 2018年6月号の「NOVEL & SHORT STORY REVIEW」で紹介されていたのを読んだときは面白そうだったのですが、お姫様文体のせいで過剰に百合々々しくなっている――というか、それありきの予定調和でした。
 

「初めはうまくいかなくても、何度でも挑戦すればいい」ゼン・チョー/大谷真弓訳(If at First You Don't Succeed, Try, Try Again,Zen Cho,2018)★☆☆☆☆
 ――バイアムは胸を高鳴らせ、宙へ飛んだ。もう龍になれるはずだ。前回失敗したのは、人間たちがバイアムをその正体――龍ではなくイムギという地を這う存在――で呼んだことが、龍になる妨げになった。だがもし、見た者が龍を見たと思ってくれたら……天もバイアムを龍と認めざるをえなくなる。それなのに、一人の人間のせいで龍になりそこねた。バイアムは天女の姿になってその僧侶に復讐しようとした。

 ある人間の龍になりそこねた龍予備軍が天女の姿になってその人間に近づき、復讐として喰らおうとするものの心を通わせ始めるファンタジー自己啓発モノみたいなタイトルが今のSF読者には求められているのでしょうか。
 

「ようこそ、惑星間中継ステーションの診療所へ――患者が死亡したのは0時間前」(Welcome to the Medical Clinic at the Interplanetary Relay Station | Hours Since the Last Patient Death: 0,Caroline M. Yoachim,2016)★☆☆☆☆
 ――A あなたは水耕区を通り、トマトにたかっている虫に手を噛まれる。あなたは走って診療所に向かう。診療所のドアには「再診の患者の死亡:0時間前」という表示がある。受診するならCへ。べつの医療機関に行くならBへ。

 ゲームブック形式で、とにかく気持ち悪い目に遭って死ぬ運命にあります。ブラック・コメディというほどブラックでもコメディでもありません。
 

「特集解説」橋本輝幸
 未訳紹介にも書かれているように女性作家のノミネートも増えたことの現れか、特集の四人中三人が女性作家です。わたしには気持ち悪いと感じられる作品が多かったのですが、アレステア・レナルズや劉慈欣の言うSFの変化と関係があるのでしょうか。

「この未訳作家・未訳作品が読みたい!」松崎健司(らっぱ亭)
 ユージイ・フォスターの遺作「それが終わるとき、彼は彼女をとらえる(When It Ends, He Cathes Her)」が気になります。「圧倒的な筆致で描写されるダンスのシーンにアイシャの揺れ動くメンタルの流れが巧緻に絡まされ、やがて驚愕の結末が」。ダンスのシーンは読んでみたい。

ティプトリーは三度死ぬ――ヒューゴー賞、キャンベル賞、ティプトリー賞の変容」巽孝之
 日本初のヒューゴー賞受賞作『モンストレス』の著者の相方が、『オスカー・ワオの短く凄まじい生涯』のパートナーだったという話。ティプトリー賞名称変更騒動のおさらい。ほんとアメリカは頭がおかしい。
 

青山ブックセンター本店・日本SFトークイベント採録大森望×小川一水×日下三蔵×飛浩隆

「乱視読者の小説千一夜(65) ダイヤルMUを廻せ」若島正
 ジョン・ウインダム
 

「SFのある文学誌(70) 『美しい星』の三島由紀夫長山靖生
 空飛ぶ円盤研究会に所属し、UFOを信じてもいた三島由紀夫による『美しい星』。当時の空飛ぶ円盤研究会の雰囲気と、『宇宙塵』。
 

「書評など」
『月の光 現代中国SFアンソロジーは、ケン・リュウ編のアンソロジー第二弾。
 

「サイバーカルチャートレンド(89) 意味や意思を伝える音声。それは言葉」大野典宏

大森望の新SF観光局(72) 災厄小説と政治風刺劇のあいだで」

「緊急企画 コロナ禍のいま」円城塔・他
 さまざまなことが、「だが、それはまだ、今ではない」
 

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