『処刑人』シャーリイ・ジャクスン/市田泉訳(創元推理文庫)★★★★☆

 『Hangsaman』Shirley Jackso,1951年。

 空想癖のある少女、新しい環境の洗礼、人に言えない過去、独善的な父親、憧れの教師……道具立ては王道の少女小説ですし、作品を覆っているある種の息苦しさはまさに少女時代特有のものだとも言えます。自分の世界に逃避している様子からは『ずっとお城で暮らしてる』を連想しましたが、翻って、思春期とは自分だけの世界に閉じ籠もるものだと考えるなら、『ずっと――』も本書も大差ないのかもしれないと思いました。ごく当たり前の少女という状態が、逃げ場がないまま肥大化すれば『ずっと――』になりえるのかも……とさえ思ってしまいました。

 深緑野分による解説・分析が秀逸です。

 皮肉屋で独善的な文筆家の父と、人生への希望を失った母の元を離れて大学の女子寮に入った17歳のナタリー。息詰まる家を脱出した先に待っていたのは、理解不能な同級生や高慢な上級生たち。ただ一人、トニーという風変わりな少女だけは他と違っていた。彼女なら、どこまででもあたしを連れていってくれる……。思春期の少女の心を覆う不安と恐怖、そして憧憬を描く幻想長編小説。(カバーあらすじ)
 

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