小川洋子と柴田元幸の野球対談に続き、柴田元幸の知り合いのアメリカ作家の野球観紹介エッセイが掲載されているのだが、これがめっぽう面白い。対談だとどうしてもお行儀よくなっちゃうところだけど、本音に近い変な視点や発言が引き出せているからだと思う。
「僕はブラックソックスを覚えている」ジェームズ・T・ファレル/藤井光訳(I Remember the Black Sox,James T. Farrell,1957)
大リーグの八百長事件を綴ったエッセイ。わたしはスポーツを歴史的に楽しむなんてことはしないので、事件自体名前しか知らない。八百長たって野球の場合どうやるんだよ、とか思ってたのでそこが面白かった。
「にわとり地獄」川上弘美
「血」シェリー・ジャクソン/柴田元幸訳(Blood,Shelley Jackson,2002)
月のものが地面からしみ出してくるので、ナプキンを手にお掃除を――という、あらすじだけ聞けばなんだそりゃだけど、世界はあたしらで回ってるんだてな感じに、不浄なるもののなかで活力が蠢いています。
「二月−三月 分数アパート」岸本佐知子
〈作品〉としての完成度が高いこちらよりも、『yomyom5』掲載の一言ギャグみたいな「カブトムシ日記」の方が好きだった。
「書写人バートルビー――ウォール街の物語」ハーマン・メルヴィル/柴田元幸訳
「第七官界彷徨(抄)」尾崎翠、「第七官界で、命がけで遊ぶ」川上未映子
すごく久しぶりに読んだけど、第七官界彷徨はいいなあ。自分に文才がないのはわかっているけれど、もし綴れるものならばこんなふうに言葉を操れたらと憧れる。川上未映子の文章ですらかすんで見える。
「怪物たち」古川日出男
「ひとりの男がいた ほか」ダニイル・ハルムス/増本浩子他訳(Даниил Хармс)
コントみたいな掌編。ロシアの作家だそうです。現代作家だと思ったら1942年に没してる。センスあったんだなあ。本書のなかでは「バートルビー」がいちばん古くさく思えてしまうのだから恐ろしい。
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