『野球の国のアリス』北村薫(講談社ミステリーランド)★★★★☆

 まえがきが挑発的(とよりは啓蒙的?)です。

 初めのうちは『アリス』文体の模倣は、著者の器用なところがマイナスになっちゃったかなと思いましたが、読んでいるうちに慣れてきて気にはならなくなりました。

 「はじめに」でわかるとおり、一つには、はっきり言葉にはできないこと、についての物語です。そして本文中にも書かれているように、ボールを受けるだけで理解し合える投手と捕手という関係から(恐らく)、野球というスポーツが選ばれたのでしょう。

 スポーツが文章で描かれても、たいていの場合なかなか臨場感が伝わってきません。野球小説としてそこがどうなっているか、が楽しみでした。実況と解説を同時に地の文が行っていて、そこに心理描写が入る、というところでしょうか。ちょっと物足りない。

 読み終えてから気づきましたが、全然ミステリーじゃありませんでした。

 野球が大好きな少女アリス。彼女は、ただ野球を見て応援するだけではなく、少年野球チーム「ジャガーズ」の頼れるピッチャー、つまりエースだった。桜の花が満開となったある日のこと。半年前、野球の物語を書くために「ジャガーズ」を取材しに来た小説家が、アリスに偶然再会する。アリスは小学校卒業と同時に野球をやめてしまったようだ。しかしアリスは、顔を輝かせながら、不思議な話を語りはじめた。「昨日までわたし、おかしなところで投げていたんですよ。」……。(函裏あらすじより)
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