上巻の精緻さとは違い、生きて還ることだけをただただ目指すガチンコな戦記物だと思っていたら、あれだけみっちり上巻で描かれた出来事のさらに別の見方がここにきて明らかになったりするからびっくりします。
とか思っていたら第三部でそれ以上の驚きが待ち受けていました。えーっ、この技法をここでこういうふうに使ってくるとは。小説家志望の少女が重要な役割を占めている物語なんだから、予想通りといえば予想通りのはずなのに、大きすぎて見えませんでした。
という驚きも束の間、真実って何なのか、小説って何なのか、ってこと自体が問い直されるような舌を巻く作品でした。これが小説でできること、なのでしょうか。寂しいような、感動的なような。
夕闇に「彼女」を襲った男は誰だったのか。時は過ぎ、男はダンケルクへの泥沼の撤退戦を戦っている。見習い看護婦のブライオニーは作家への夢を紡いでいる。恋人たちは引き裂かれ、再会を夢見ている。彼らの運命は? 真の犯人は? 1999年、すべての謎は明らかになるが――。いつしか怒濤と化した物語は、圧巻の結末へと辿り着く。世界文学の新たな古典となった名作の、茫然の終幕。(カバー裏あらすじより)
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