『女探偵ドロテ』モーリス=ルブラン/長島良三訳(偕成社アルセーヌ=ルパン全集別巻1)★★★★☆

 『Dorothée, danseuse de corde』Maurice Leblanc,1923年。

 買ってはいたけれど読みのがしていたものをようやく読了。

 非ルパンものではありますが、『カリオストロ伯爵夫人』で触れられていた四つの謎の一つをめぐる物語なので、作品世界は一緒で、いわばルパン・シリーズ番外編といっていいでしょう。

 本書の主人公は綱渡り芸人のドロテ。ルパンのようなスーパーマンが主人公だと、簡単な罠を見抜けなかったりセコい手を使ったりされるとがっかりするのですが、本書のように一般人が主人公ならそれもそれほど不自然ではありません。――と思ったところでそういえば、『奇岩城』も同じようなタイプの話ですね。

 謎のラテン語のキーワード「イン・ロボール・フォルチュナ」や、盗まれたメダルをめぐる攻防(敵から逃げたり罠を仕掛けたりするところで芸人ならではの身の軽さが役立ちます)、悪役デストレイシュの執念深さ(何度も対決)も面白いのですが、何といっても不老不死なんてものが飛び出して来たサービス精神には脱帽です。たしかに、不老不死でもなければ遺言の目的自体が(ということは宝の存在自体が)無意味なものになってしまうわけではありますが。

 遺言といえば、「その日」が訪れて財宝の謎が一気に解明されそうな一つのクライマックスにはかなりわくわくさせられましたが、その一方で、ドロテやデストレイシュがあれだけ苦労した謎解きなのに、地元の人たちにも伝説として知られていて、別の遺族には謎でも何でもなくストレートに伝えられていた――というのには笑っちゃいました(^_^)。そりゃないでしょ。。。面白いからいいけど。

 最後に出てきた「あばずれ」がずいぶんと唐突で、何だったんでしょうね……? 気になります。

 四人の少年とともに自由な旅暮らしを営む綱渡り芸人ドロテは莫大な財宝の伝説を共通してもつ人びとに出会い〈イン・ロボール・フォルチュナ〉の銘が刻まれた金メダルの存在を知る/銘の謎をめぐって残酷な手がドロテにのびる/財宝の闇を消し去るものはだれか! 冒険児ルパンに比肩する女探偵ドロテの闘いははじまる(カバー袖あらすじより)
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