『ミステリマガジン』2011年11月号No.669【特集 刑事コロンボに別れの挨拶を】

 今月号はコロンボ特集(制作コンビの短篇3篇ほか)に、『開かせていただき光栄です』番外編に、月村了衛『機龍警察』短篇と、久々にたっぷり楽しめました。

刑事コロンボに別れの挨拶を」
 まずはミステリ関係者によるお気に入りエピソード・アンケートを、42人分そのままダダーッと掲載。豪華?手抜き?

「愛しい死体」「子どもの戯れ」「強盗/強盗」リチャード・レヴィンスン&ウィリアム・リンク/上條ひろみ他訳(Dear Corpus Delicti,Child's Play,Robbery, Robbery, Robbery,Richard Levinson&William Link,1960,1959,1959)
 ・妻を殺してから愛人を妻役にして目撃者を作りアリバイを偽造しようとするが……。ちょっとずつの運命のほころびが皮肉な結末を迎える「愛しい死体」は、三篇中もっともコロンボを髣髴とさせる一篇。

 ・サマーキャンプに馴染めないアーノルドは、家に帰りたがるばかりで誰の言うことも聞かず、奇妙な言動ばかり取っていた……。火曜日の段階で“今週手紙を書くのが三度目”という時点で、かなり異常で怖い。

 ・銀行員のヘンダーソンは、強盗の顔に見覚えがある気がした。馴染みの食堂の料理人だと気づいたヘンダーソンは、料理人に電話をかけて……。魔が差した銀行員が遭遇した、いくつかの幸運といくつかの不運。これも「愛しい死体」と同様、事件を成り行きではなく探偵役に解決させれば、コロンボ風に。
 

「資料と研究」小鷹信光大倉崇裕・町田暁雄・細越麟太郎・松坂健・小山正
 町田氏による、幻の『コロンボ』シナリオをめぐるエッセイと、『コロンボ』ブルーレイBOX情報。毎度お馴染み小山氏による映像作品解説。など。
 

「小特集1 皆川博子
 『開かせていただき光栄です』の前日譚「チャーリーの受難」は、クラレンスにまつわるエピソード。かつて弟を馬車に轢かれた悲しい思い出を持つクラレンス。床屋である父親が、富豪の吹き出物を診たお礼に遺贈するものがあると連絡を受け、出かけた日……。今月号は「迷宮解体新書」も皆川氏。

「長島槇子メールインタヴュー」
 『吉原純情ありんす国』刊行記念。『玉工乙女』の勝山海百合氏に続いて、『幽』→早川という流れには何か理由が?
 

「小特集2 月村了衛」「機龍警察 輪廻」
 少年兵用の「義肢」密売を内偵していた由起谷たちが知った、戦争の真実……。ときどきニュースでも話題になっている現実の問題を、「機甲兵装」という作品固有の設定に絡めてました。

「書評など」
 気になったのは、シムノン本格小説選『モンド氏の失踪』、「幻想小説」ジェデダイア・ベリー『探偵術マニュアル』くらいです。今月はあんまりなかった。
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