『大江山千丈ヶ嶽 酒呑童子由来』村上政市監修/鬼ヶ茶屋 版木/福井朝日堂 挿絵(アットワークス)

 先日たまたま目にした学研ムックの『日本歴史伝説傑作選』に紹介されていた鬼首の絵がたいへんにインパクトがあったのでどうしてもそのすべてを見たくなりました。キャプションには「大江山絵詞巻物」とあったので確認してみるも、『日本の絵巻』の「大江山絵詞」とは似ても似つきません。

 そこでネットでいろいろ検索してみると、本書にぶち当たりました。なんと発売直前という恐ろしいタイミングでした。(そうとは知らずに発売前に出版社から直接フライング購入してしまいましたが……)

 さて実際に購入してみてわかったことは――。本書は大江町に伝わる「大江山千丈ヶ嶽 酒呑童子由来」を単行本化したものです。本文については影印&翻刻が上下二段組みになって掲載されています。原本の挿し絵も3葉掲載。

 表紙にもなっているお目当ての挿し絵は、「福井朝日堂」とあるように、どうやら現代人の手になる作品でした。酒呑童子と頼光を描いた絵葉書のイラスト8葉を再利用した模様です。

 やたらと美形の頼光一行が、鬼を斬り殺す場面では目を剥いて眉を逆立て荒々しく描かれていたり、もともと人間だったゆえか太ったおっちゃんのような姿の酒呑童子が、首を斬られて本性を現した途端に表紙絵のような完全な鬼の姿になっていたりするような、めりはりの利いた表現手法が見事でした。

 妖怪絵として見るならば、何といっても表紙絵だけが突出していて、その点では物足りないとも言えます。物語の前半部分に当たる絵がないため、前半には挿し絵ではなく大江山の風景写真が掲載されているのも釈然としません。せめてそのくらいは描き下ろして欲しかったところです。

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