「隣りのゾン美さん」オガツカヅオ(『週刊漫画TIMES』2012年9/14号)★★★★★

 『りんたとさじ』のオガツカヅオの新作読み切りが載っていると知り、バックナンバーを購入しました。

 タイトルだけ見たら隣にゾンビの女の子が住んでいるみたいですが、そんな話ではありません(^_^;。

 高校生の「じんこ」は、同級生・鵜納真魚子《うのうまなこ》の紹介でアルバイトをしていました。それは「魂が抜けて身体だけがこの世に残っている人」=「ゾンビ」の形を保つことでした。「魂が入っていないと自分の形を保てず/どんどん忘れて崩れていくので」、人の手で刺激しなくてはならないのです。

 きゅうりをポリポリかじるのが好きな女の子と、眼帯タイプの眼鏡をかけている女の子。そして上記「ゾンビ」の設定。こうした独特の感性がやっぱりオガツカヅオだなあとしみじみ感じました。

 マナに依頼した「故人」とは恐らくゾンビとなった今泉さん自身でしょう。いったい生前にどのように生きていて、どのような事情で故人となったのか、じんこならずとも思いを馳せてしまいます。ヒントとなる材料らしきものはあります。あるいは「ターン」もギャグではなく、生前の記憶によって「暴れ」るのだとすると、もとはダンサーだったのでしょうか。「一番強い記憶」がキスなのは、愛妻家だったのか。ダンサー(仮)と考え合わせると情熱的な人だったのかもしれません。マナの説明からは、家族にお金を遺すため自殺したようにも聞こえます。

 これまで読んだオガツ作品は風変わりなセンスに惹かれるところが大きかったのですが、今回の作品ではキャラクターにも大きな吸引力がありました。制服のポケットに手を突っ込み、煙草を吸い、交渉の際には眼鏡から眼帯に装いを変える、風来坊のようなマナ。彼女の出てくる作品を、もっと見たい、もっと読みたい、と思わずにはいられません。

 風に眼帯の紐をなびかせて、「それがあたしの仕事さ」と告げるシーンはとりわけ美しい場面でした。風になびいているのはマナの眼帯の紐とじんこの制服のリボンだけで、髪の毛が微動だにしていないのは、フィクションの嘘なのですが、ここはやはり嘘でも美しい方がいい。マナが眼鏡の黒レンズを上げるシーンも印象的で、ふだん見えない右目を見せながら敢えてフキダシで左目を隠しているのですが、そもそもマナの右目はどうなっているのかが気になります。「マナコ」という名前は「眼」に由来していそうですし。

 名前といえば「じんこ」は「雀目仁子」と書くことが給料明細からわかりますが、「すずめひとこ」と読むのでしょうか。何か意味があるのかな。どうでもいいですが「じんこ」というのは「さじ」の本名「じゅんこ」と音が似ていますね。

 出版社のページ → http://houbunsha.co.jp/magazine/detail.php?p=111003


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