『シンカン』Vol.5(朝日新聞出版)

「春ときつねとパンの耳」オオタガキフミ
 京都よしなごとシリーズの第4話。今回はパンの耳が大好きな笹屋さんがメインです。バイト先のパン屋さんから、おじいちゃんのところに紙袋を届けることになった笹屋さんですが、道に迷ってしまい……。
 

「少年ファラオ」未知庵
 これまでとはちょっとタイプの違うオチでした。「もしも少年がファラオだったら」というある意味ベタな設定も、ここまで間違った方向に。

「TSUKIKAGEカフェ」川原由美子
 今回は女の子がお茶淹れの出張に行きます。マダムがいないので画面が白い。一週間人から願いを言い当てられなければ願いが叶う「一週間」が嘘か誠かどちらとも取れるところは、『ななめの音楽』の初期のころを思い起こさせました。その『ななめの音楽』が7月8月に単行本化予定、普通のコミックよりやや大きめのA5サイズなのが嬉しい。
 

「猫のような」オガツカヅオ
 おばあちゃんから電話で呼び出されたタツトは、猫のガルに導かれるようにして、排水溝に閉じ込められてしまった子どもを救助しました。どうやらおばあちゃんには不思議な能力があるらしいのですが……。

 ネムキにはなかなか「りんたとさじ」の新作が連載されませんが、その渇を癒すように、独特の感性をした怪奇幻想作品を描いてくれました。このおばあちゃんの最期のシーンはオガツカヅオにしか描けないでしょう。冷静に考えると猫の瞳を覗き込んだタツトに見えた光景は、(何も見えなかった可能性も含めて)幾通りしかないと思うのですが、もしかすると常識では予想もつかない光景なのではないか――と思わせてしまう時点で著者の術中ですね。
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