『ミステリーゾーン』64「モンスター!」「宇宙よりの使者」「時のすきま」「エレベーター」「無視刑囚」「誰よりも愛される歯医者」
「モンスター!」(Monsters!,1986.1.24,ep036)★★★☆☆
――トビーは父同様に怪奇映画の大ファンだった。近所に越してきた老人は、それを知って「私は吸血鬼だ」と打ち明けるのだった。恐がりながらも老人のことを探り始め、老人の怪力や血液を目撃したトビーは、やがてくしゃみや頭痛を訴え出した。
吸血鬼と少年の交流と、遺伝子レベルで相容れない吸血鬼と人間という現実が描かれます。夜の世界を愛する少年や、さびしい存在としての吸血鬼は、ミステリーゾーンに相応しい登場人物と言えるでしょう。「本物のモンスター」の正体が安っぽいのはご愛敬です。
「宇宙よりの使者」(A Small Talent for War,1986.1.24,ep037)★★★★☆
――宇宙からの知的生命体とどう接するか世界会議が開かれている最中、宇宙人の大使が現れた。200万年前に地球にばらまいた生命の種が、愚かな人類に進化してしまった。だから明日には地球を滅亡させると大使は告げた。交渉の結果、人類は一日の猶予をもらった。
宇宙人との接触を扱ったショートショート。人類の夢を逆手に取ったような皮肉な結末が効いていました。宇宙人が「いかにも宇宙人」な外見でないのが、オリジナルシリーズと比べて進歩していると感じます。
「時のすきま」(A Matter of Minutes,1986.1.24,ep038)★★★★☆
――マイケル夫妻が目を覚ますと、青服の男たちが家具を運び出していた。マイケルが文句を言っても、男たちは無言で作業を続けている。ドアを開けて飛び込んだ白い世界から抜け出すと、黄色い服の男がいた。「君たちはいてはいけない場所、いや時間にいる」
手作業(^^;。11時37分に迷い込んでしまった夫婦の物語です。視覚的に表現された時間の発想の仕方が面白い作品でした。テレビや映画なんてそのまんまこの時間観だという気もします。英語版Wikipediaによれば、シオドア・スタージョン「昨日は月曜日だった」
「エレベーター」(The Elevator,1986.1.31,ep039)★★★☆☆
――ロジャーとウィル兄弟は、科学者の父親が飢えをなくすための完全食の研究をしているという倉庫に忍び込んだ。弟のウィルによれば父親は半年に一回ここを訪れているという。戻ってくる足跡はない。父親は今もここにいるのだ。やがて二人は、巨大な動物の死骸を発見する。
レイ・ブラッドベリ脚本。ブラッドベリの幻想と怪奇の側面が出ている作品です。少年というよりは青年二人が奇怪な倉庫を探検してゆく様子には、例えば『何かが道をやってくる』のような、わくわくする恐怖に満ちていました。ただしそれまでの場面に雰囲気がありすぎただけに、あっさりしすぎるオチには拍子抜けの感がありました。
「無視刑囚」(To See the Invisible Man,1986.1.31,ep040)★★★☆☆
――ミッチェルは裁判の結果1年間の無視刑に処された。額に印をつけられたミッチェルは、すべての人から無視されることになった。
ロバート・シルヴァーバーグ「見えない男」原作。無視刑という刑罰が存在しているディストピア――という言い方をすればSFですが、何のことはない、シカトというイジメです。しかしながらミッチェルが人間らしい感情を手に入れたということは、言い換えるなら罰がきちんと罰として機能している、とも言えるわけで、何とも複雑な感想を持ちました。
「誰よりも愛される歯医者」(Tooth and Consequence,1986.1.31,ep041)★☆☆☆☆
――歯科医のマイロンはコンプレックスから精神科に通っていた。医院に出勤して患者の姿を見ても落ち込んで自殺を考えてしまう。ミス・ビクスビーに夕食を断られ、首を吊ろうとしたところ、歯の妖精が現れた。
魔法のランプものの変種です。融通が利かないのが、この手の妖精のお約束です。
『ミステリーゾーン』65「ようこそウィンフィールドへ」「意識の空白」「おばあちゃん」「オリジナル・ストーリー」「特殊音響効果」
「ようこそウィンフィールドへ」(Welcome to Winfield,1986.2.7,ep042)★★★★☆
――面会時間過ぎに男が病院を訪れた頃、ベッドで寝ていたマットが急にうなされ始めた。付き添いの女性はマットを連れ出し、ウィンフィールドという西部時代そのままのような町にたどり着いた。3週間後、あの男がウィンフィールドにやって来て、マットの居所をたずねたが、町人たちは口を割らない。
現代的なスタイルの死神と死神からの逃亡というアイデアはありふれているのですが、住民全員が死神の目から逃れた町というスケールの大きさが、若者たちの逃避行というサスペンスとマイペースな町人たちというユーモアと相まって、独自の世界を形成しています。解決方法が機知ではなく人情によるものなのも、この作品の場合は却って効果を上げているように思います。
「意識の空白」(Quarantine,1986.2.7,ep043)★★★★☆
――フォアマンが324年の人工冬眠から目を覚ました。サイキックが発達した世界で、科学者である自分がなぜ目覚めさせられたのか――? 予知で知った隕石衝突を防ぐためには、フォアマンが開発した粒子ビーム衛星が必要なのだという。
短篇シリーズという性質上ワンアイデアの作品が多いなかで、筋書きにひとひねりのある珍しい作品でした。しかもそれが単なるSF的アイデアだけに終わらず、文明批判や現代人の心理的葛藤などに即しており、SFとしてもドラマとしても見応えのあるものになっていました。
「おばあちゃん」(Gramma,1986.2.14,ep045)★★★★★
――おばあちゃんと二人で留守番することになったジョージィ。ジョージィは昔からおばあちゃんのことが怖かった。「お茶をちょうだい」という呻き声に応えてお茶を持っていくが、恐怖のあまり床に落としてしまう。
スティーヴン・キング「おばあちゃん」原作。ハーラン・エリスン脚本。ブラッドフォード・メイ監督。ジョージィの心理状態や大人たちの噂をエコーの利いたモノローグで語ることで、現実というよりも子ども特有の〈ごっこ遊び〉のようなワクワクドキドキ感が生まれています。クトゥルフをそのまま現実として描いても荒唐無稽になるだけでしょうから、よくできた演出だと思います。
「オリジナル・ストーリー」(Personal Demons,1986.2.14,ep046)★★★☆☆
――作家のオバノンはスランプに陥っていた。アイデアが浮かばない。そんなオバノンに、醜い怪人が見えるようになった。怪人たちはさまざまないたずらをするが、ほかの人の目には姿が見えない。オバノンの筆はいよいよ止まってしまった。
ピーター・メダック監督。ロックン・S・オバノン脚本。マーティン・バルサムほか出演。見た目は不気味ですが可愛い奴らです。メタな趣向自体はよくあるものですが、それを前面に押し出すのではなく、最後にさらっとさりげなく終わるのが効果的です。
「特殊音響効果」(Cold Reading,1986.2.14,ep047)★★★★☆
――代役としてチャンスを得た若手俳優のミロ・トレント。だが最新の台本をその場で渡されリハーサルもなしに二分後には本番だった。プロデューサーのウェストブルックが、スタッフが用意したアフリカの物神に戯れに「すべての音をリアルに」と願ったところ、本物が現れた。
ガス・トリコニク監督。マーティン・パスコ、レベッカ・パール脚本。ラジオドラマで言ったことがすべて現実になって俳優たちが非道い目に遭うコメディです。ただそれだけなのですが、「音」だけではなく「音を出すもの」がまるまんま現れてくるカオスな状態の果ては、勘違いアフリカの集大成みたいな景色を経て、アフリカですらないものが待ち受けていました。
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