『アフタヌーン』2016年7月号(「コール」こまねずみ、「クロスオーバー」瀬戸レミ)、『あさひなぐ』19、『ACCA』5

「小さな恋のやおよろず」千真
 ――私の名は八重。桜の神です。そして、恋をしています。桜の木を伐り倒されてしまい困っていたところを、助けてくれたのは恋をしているその相手でした。

 四季賞出身者による新連載。ラブコメというほどではないほのぼのショート・ストーリー。
 

「コール」こまねずみ ★★★★★
 ――先輩に告られて、二週間でふられた。理由が「イメージと違った」。勘弁してよ。……公園の前を通りかかると、見覚えのある顔。同級生の絹田君たちが缶蹴りをしていた。寅野はひょんなことから缶蹴りに参加することになった。

 2016春四季賞鶴田謙二特別賞受賞作。まず何よりもすごいのが、「缶蹴り」だけでこんなにも引き込まれる物語を作れるところです。どんなスポ根よりも、アクションよりも、戦争ものよりも、面白い。この人なら何を描いても絶対に面白いはずだと確信できます。それに加えて、失恋、プライド、悩み……中学生?高校生?の心情もしっかりフィットさせています。
 

彼女と彼女の猫新海誠原作/山口つばさ漫画

 最終回。
 

「タイド バイ ブラッド(前編)」小林嵩人 ★★★★☆
 ――吸血鬼は復活を前にバラバラに散り、宿主をさがした。互いの力を貪り合い、残った最後のコウモリが、吸血鬼になれるのだ。日畑優が助けた弱っていたコウモリも、吸血鬼から散った一体だった。

 四季賞出身者による前後編の読み切り。ページめくりを効果的に用いていて、これは電子書籍だとわかりづらいかも、と思ってしまいます。いきおい、ストーリーよりも絵に見入ってしまうような作風ではありました。好みの絵ではないけれど。
 

「クロスオーバー」瀬戸レミ ★★★★☆
 ――黒魔術の現場に踏み込んだために図らずも悪魔を呼び出してしまった刑事シモン。女性ばかりを狙った連続通り魔事件を止められずにいたシモンは、現れた悪魔に言った。「おい悪魔、事件解決に協力したら、魂なんてくれてやる」

 四季賞出身者による読み切りデビュー作。バディものの変形ですね。犯人逮捕でも正義でもない理解不能な悪魔の行動原理に振り回されることで、シモン刑事の刑事魂がいっそう引き立って伝わってきます。悪魔との契約にどう落としどころをつけるのかと思っていたのですが、なるほどそうきましたか。シモンのトラウマは明かされなかったこともありますし、シリーズ化されて連載もありそうです。
 

『インハンド―紐倉博士とまじめな右腕―』第3話「モイラの島」朱戸アオ
 ――ある会社役員が自殺した。不正な遺伝子調査をしていたのではないかと疑う牧野の依頼で、紐倉は会社に乗り込む。「ファウンダープロジェクト」。かつて紐倉が宗教コミュニティーに頼まれて調査した「鬼子」の研究がもとになっていた。データは漏れないはずだった……。

 最終回。神のごとき紐倉が、不遜でありながらも自分の限界を語る回でもありました。『Final Phase』にも「奇跡は起きないわ……私たちはベストしか尽くせないのよ」という台詞がありましたが、諦念ともちがう達観した人間観が、大きいです。
 

  

 

あさひなぐ』19 こざき亜衣小学館ビッグスピリッツコミックス)
 団体戦初戦。ひとりひとりのモノローグが多くなっています。それだけひとりひとりが自分でものを考えられるまでに成長してきたということなのでしょう。そして予想もしないアクシデントで、さらなる成長を迫られます。とはいえ「大丈夫だから、捨てたんです」と言われるまでにはすでに成長しているようです。

『ACCA 13区監察課』5 オノ・ナツメスクウェアエニックス ビッグガンガンコミックススーパー
 回想を挟んで、ジーン、ニーノ、クーデターの陰謀、すべてがつながりました。おかっぱ頭のレイル巡査(そんな名前だったんだ(^^;が活躍。ポイント稼いだかな? と同時にACCAのお姉さま方から釘を刺されてます。それにしても五長官、裏があっても不思議はない、というか裏があって当然の人たちでしたが、そういうからくりでしたか。

   


防犯カメラ