『おおきく振りかぶって』137「4市大会 8」ひぐちアサ
まさかの佐倉ピッチャーです。
『ヴィンランド・サガ』144「バルト海戦役 20」幸村誠
敵味方入り乱れての戦場だからこそ(?)の、二つの再会。
『しったかブリリア』4「告白」珈琲
ひたすらしったかぶり二人の掛け合いバトルだけで進んでゆく
『ダレカノセカイ』1「カモノユカリ」三都慎司
――加茂野ゆかりは他人に興味がなかった。高校卒業式の前日、ゆかりの前に金髪の少女と、街を襲う人型の白い巨人が現れた。少女によれば、巨人はクリエイターが作り出したオルビスであり、ゆかりは未確認の新しいクリエイターだという。
「アレグロ」「ハヤブサ」の著者による新連載。読み切り二篇とはだいぶ趣が違いますが、上手さ面白さは。どうやら「クリエイター」というのはイメージを実体化できる能力を持った人間のようです。学園ものの一コマみたいな雰囲気から一変、突如としてビルそのものから(!)現れる巨人と、パーカーに短パン姿で動き回るアクションが爽快でした。
『シンギュラリティは雲をつかむ』9「開発者は拳で語る」園田俊樹
市長の娘をちゃんと活かして来るあたり、ほんとうに上手いなあと思います。ここ何回かロボット(飛行機)バトルが続いていましたが、しっかり人間の駆け引きも忘れていません。
「二人で破戒れば怖くない」源勇気
――タケルの母親は万引き癖があり、借金を返すのに無断でタケルの金を使うこともあった。同級生の川上さゆりの母親は宗教にはまっていた。二人で海に行ったことをきっかけに、さゆりは破戒してこれまでやりたかったことをしはじめる。
四季賞2017年秋のコンテスト四季大賞受賞作。タイトルだけはセンスがありませんが、古くさい感じの絵がちょっとハードボイルドでアンダーグラウンドな内容にマッチしていました。目を引くのが、コマ割りやアングルの抜きん出たセンスです。二ページ目の「ガッコ行ってくるわ」のコマ、なぜ魚眼レンズを通したように歪んでいるのかはわかりませんが、これがうるさくありません。日時もコマも飛び越えての「でかい声……」「……出るんだ」という台詞。二人が屋上で話すシーンの、下からの飛行機雲のアングル……等々。そして何よりも、最後の三ページの、カットの連続だけで見せる結末は素晴らしいとしか言いようがありません。「ねび、ねび、ねび、ねび」というバイクの音が面白い。
『S-Fマガジン』2017年12月号No.724【オールタイム・ベストSF映画総解説PART2】(早川書房)
「オールタイム・ベストSF映画総解説PART2」
『デリカテッセン』てジャン=ピエール・ジュネ監督だったんですね。ほかにも『グレムリン』のジョー・ダンテ監督の『マチネー 土曜の午後はキッスで始まる』だったりと、そうだったのかと初めて知った監督と作品の関係がありました。『ガメラ 大怪獣空中決戦』は、「カメだからガメラ、にしない」という、子供騙しではない怪獣映画。『アイアン・ジャイアント』は「公開当初から古典になることが運命付けられたような映画」であり、「少年が主人公の児童映画であり、異世界から来たロボットとのファーストコンタクトであり」だそう。『ギャラクシー・クエスト』のシガニー・ウィーバーって五十歳だったのか。てかこの作品、単体でも面白いので、ことさらにスター・トレックに言及するのは観たがる人を減らしてしまう恐れがあるのでやめてほしい。『プレスリーVSミイラ男』って、ジョー・R・ランズデール「ババ・ホ・テップ」の映画化だったんですね。まあその通りの話ですもんね。『ULTRAMAN』は「平成ウルトラシリーズがもっとも大人向けに振れた瞬間」。
「『ブレードランナー2049』公開記念特集
『ブレードランナー』の続編。リメイクではなく続編というのが嬉しい。主役のライアン・ゴズリングのインタビュウのほか、押井守インタビュウ「過去を否定して、未来を作り出すSF」など。
「乱視読者の小説千一夜(56)地獄のペーパーバック」若島正
ここで紹介されているケン・グリーンホールというホラー(?)作家が気になりますが、果たしてどんな作品を書いているのか――。次回が待ち遠しい。
「SFのある文学誌(55) シュルレアリスムとエスプリ2 贋救世主から架空都市へ」長山靖生
アポリネール作品の紹介。堀辰雄訳による探偵趣味が強い作品集『アムステルダムの水夫』と、辰野隆他訳『贋救世主アンフィオン 一名ドルムザン男爵の冒険物語』。
「書評など」
◆映画は『ブレードランナー2049』『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』の二作。といっても記事のほとんどが『ブレードランナー2049』に割かれていて、『IT』はたった9行。
◆『ジャック・グラス伝―宇宙的殺人者―』アダム・ロバーツは、「〜伝」というのがまずそそられますが、さらに「ミステリとしてのできはもちろん、SFとしてのできも(中略)超一級」だそうです。『わたしの本当の子どもたち』は説明不要、ジョー・ウォルトンの新作です。
「筒井康隆自作を語る(4)『欠陥大百科』『発作的作品群』の時代(後篇)」筒井康隆×日下三蔵
自作の映画化のノベライズを本人が変名で書いていたとか、植草甚一がゲラを読んでまだ発売前の本の書評を書いちゃったとか、ぶっとんだエピソードが出てきます。なんで事実だけでこんなに面白いんでしょう。登場人物の名前を「わざと読めないようなめちゃくちゃな字にしてる」ので、「朗読は全部お断わりしています」というエピソードもおもしろい。
「第5回ハヤカワSFコンテスト大賞受賞作発表」
大賞は『コルヌトピア』津久井五月、『構造素子』樋口恭介の二作でした。「環状八号線が巨大なグリーンベルトとなり、そこに茂る森が一大生物計算機として活用される近未来の東京」という設定からすでに面白そうな『コルヌトピア』。塩澤編集長に「その完成度は、たとえば円城塔のデビュー長篇『Self-Reference ENGINE』にも匹敵する」と評された『構造素子』。
「花とロボット」ブライアン・W・オールディス/小尾芙佐訳(The Girl and the Robot with Flowers,Brian W. Aldiss,1965)
追悼企画。短篇再録と中村融による著者紹介。
「忘却のワクチン」早瀬耕
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