『不思議屋/ダイヤモンドのレンズ』フィッツ=ジェイムズ・オブライエン/南條竹則訳(光文社古典新訳文庫)

『不思議屋/ダイヤモンドのレンズ』フィッツ=ジェイムズ・オブライエン/南條竹則訳(光文社古典新訳文庫

 新訳を機に再チャレンジしたものの、やはり苦手な作家でした。

「ダイヤモンドのレンズ」(The Diamond Lens,Fits-James O'Brien,1858)★★★☆☆
 ――うんと幼い頃から、わたしの関心は顕微鏡で見る世界の研究に向けられていた。長じてから医学を修めるという名目でニューヨークに出ると、営々辛苦の末にさまざまな発見をしたにもかかわらず、装置の不完全さに研究を阻まれた。あらゆる外皮を突き抜け、大元の原子に到達できるような顕微鏡がほしい。ウルペスという霊媒を訪れ、顕微鏡の祖レーウェンフックの霊を呼び出した。

 レンズと狂気という鉄板の組み合わせによる、理想の美女を夢見た妄想小説。完全無欠なレンズによって見えるものが、ほかの何ものでもなく、完全無欠な女性であるという一点からして、永遠の女性を求めるあまたの古典の系列に連なる作品です。
 

「チューリップの鉢」(The Pot of the Tulips,1855)★★★☆☆
 ――ヴァン・クーレン氏は嫉妬狂で、妻が予定より二月早く出産したことを知って、恐るべき復讐を考えついた。子どもの道徳心を殺し、放蕩者になるようにした。ヴァン・クーレン氏は財産を一文も遺さなかった。これが死後の復讐であった。だが死の床で彼は「わしは間違っていた――」と言って事切れた。

 今となっては滑稽としか感じられない心霊科学かぶれですが、当時としてはここに書かれた現象が「本当っぽさ」を補強していたのかもしれません。
 

「あれは何だったのか?―一つの謎―」

「なくした部屋」

「墓を愛した少年」
 

「不思議屋」(The Wondersmith,1859)★★★☆☆
 ――不思議屋のヒッペ氏はジプシー仲間と協力して、木偶人形に悪魔の魂を宿らせて人間たちを襲おうと企んでいた。娘のゾネーラは夜は暗闇に閉じ込められていたが、古本屋の若者ソロンと愛し合っていた。

 訳者も書いている通りホフマンの影響がモロに見られますが、甘いロマンスと動物の役立ち方に、ホフマンとは違う甘さを感じます。
 

「手品師ピョウ・ルーが持っているドラゴンの牙」

「ハンフリー公の晩餐」

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