『船長ブラスバオンドの改宗』バアナアド・ショオ/松村みね子訳(盛林堂ミステリアス文庫)

 『Captain Brassbound's conversion』George Bernard Shaw,1899年。

 バーナード・ショーによる戯曲。もちろんショー自身も著名な劇作家なのですが、本書が2014年になって復刊されたのは、翻訳者が松村みね子片山廣子)であるという点に負うのでしょう。かくいう私も購入したのはそれが理由ですし。

 物語の舞台はアフリカ西海岸。宣教師ランキンの許を、旅行家のハラム判事と亡妻の妹シセリイが訪れます。危険なモロッコを訪れてみたがる二人に、一帯のならず者のボスであるブラスバオンド船長を護衛につけますが――なんと船長は、判事の弟であり宣教師の友人でもあったマイルスがブラジル女に生ませた私生児なのでした。幼い頃に判事一族に放り出された恨みから、船長は二人をムール人の酋長に差し出そうとしますが……。

 判事を知っているチンピラのドリンクウォタアが、宣教師ランキンも判事と知り合いだと知り、自分と同じように宣教師も裁判にかけられたのだと勘違いするところで、ぐっと心をつかまれてしまいました。このドリンクウォタアは何しろお調子者で、黙っていればいい場面でも口を閉じているということができません。ツッコミ役のレッドブルックといいコンビです。

 さてタイトルが「改宗」ですから、運命の不思議な巡り合わせによる復讐がサア始まる――というわけにはいきません。かつての大女優を念頭に書かれたというだけあって、紅一点のシセリイ嬢の堂々たる献身により、物語はおしゃれに幕を閉じるのでした。

 


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