『刑事コロンボ 完全版』vol.1 DISC2(ユニバーサル)
「構想の死角」(Murder By The Book,1971)★★★☆☆
――フランクリンとフェリスは人気ミステリ作家コンビだ。フランクリンはコンビ解散を言い出したフェリスを別荘に誘い、オフィスで残業するから帰れないという電話をフェリスにかけさせる。そうしてフェリスが妻のジョアナに電話しているところを射殺する。ジョアナは警察に電話するが、もちろんオフィスには死体はない。フランクリンはフェリスがマフィアの取材をしていたことをコロンボに知らせ、殺し屋の仕業ではないかと仄めかす。後日、デート中のフランクリンは、別荘近くの売店の女将に声をかけられる。「見ちゃったの……」
パイロット版を経ての記念すべき連続シリーズの第一作。スティーブン・スピルバーグが監督をしています。コロンボではなく犯人の方からコロンボにからんでゆくのが、今となっては新鮮です。それだけにミスらしいミスが何なのかがなかなかわからなかったのですが、やはり第三者がいると思い通りにはいきません。そしてそっちの対応をしている間に、コロンボに不在を気取られてしまうという痛恨のミス。そして小さなミスがどんどん積み重なって、気づけばいつの間にか容疑が固まっているというのは、やはり盛り上げ方がうまいなと思います。実作者の方ではなく渉外担当の方が殺人を犯すという構図にもちゃんと意味があるようで、その実コロンボの誤解だったというラストが印象的です。
「指輪の爪あと」(Death Lends A Hand,1971)★★★★★
――新聞界の大物アーサー・ケニカットから浮気調査を依頼された探偵事務所所長ブリマーは、依頼人に噓の報告をしてそのことをタネに妻を脅迫し、夫の情報をスパイしろと取引を持ちかける。だが断られたうえに逆にすべてを夫に打ち明けると脅され、ブリマーは発作的にケニカット夫人を殴り殺してしまう。死体が移動されていたことから、物盗りではなく知り合いの犯行だとコロンボはにらみ、ケニカットに妻の男性関係や悩みをたずねる。捜査が進まないことに業を煮やしたケニカットは、知り合いの探偵ブリマーを捜査に協力させる。コロンボは妻の左頬についていた傷に疑問を感じていた。
ロバート・カルプ、レイ・ミランド出演。リチャード・レヴィンソン&ウィリアム・リンク脚本。発作的に殺してしまい呆然として固まるブリマーの眼鏡に偽装工作の過程を映す演出が面白い。呆然としつつも身体は勝手に動いているというのを表現しているとしたら、案外リアルなのかもと思ってしまいます。被害者の夫の新聞王に捜査の遅れを責められて口ごもるコロンボは意外です。ブリマーと初対面で手相を見て「頭が切れすぎる」と見立てたコロンボは、この時点で疑っていたらしいのですが、「頭が切れすぎる」というコメントが説得力を持つ風貌なのが名キャスティングでした。出入口の扉と同じデザインのクローゼットをコロンボが間違えて開けるというギャグが手がかりに繫がるところは、あればっかりはコロンボのいやらしさではなくさすがに偶然なのでしょう。ゴルフコーチを追い詰めるところはさすが手際がいい。そこからは、顔についた切り傷から犯人像を推理するところといい、至極スマートな探偵ぶりでした。ケニカット邸にあった夫婦の写真が終盤になって効いてくるとろこのセンスもいい。地味に名作でした。
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