『魔女の死んだ家』篠田真由美(講談社ミステリーランド)★★★☆☆

 ミステリとしては残念賞かな。

 雰囲気はいい。挿し絵もいい。そもそも幻想的な部分に関しては、趣味に関しても実力に関してもそれなりのものを持っている作家だと思う。しかし物語が破綻している(というか収斂し切れてない)のだ。ミステリとしても小説としても、ラストが駆け足で強引なため、無茶苦茶な印象を受けてしまう。

 これまで何作か読んでみて思うに、著者はいろいろな伏線を収斂する手際がとても下手なのだろう。例えば有栖川有栖島田荘司、歌野正午や泡坂妻夫の様な人たちのことは、謎や伏線を収斂する名手だと感じている。伏線の撒き方や回収の仕方、解決編における手がかりの拾い方や真相を明かす手順・手際が巧みなため、極端な話、探偵の蘊蓄がなくても、事実だけがばーんと書かれてあるだけで何の説明も要らないのだ。

 ところが篠田氏はそのあたりが上手くないため、名探偵の推理が言葉足らずで説明仕切れていない。余韻を残すとかではなくて単にすっきりしない読後感だけが残ってしまう。

 あと、これは綾辻行人にも言えることだけど、撒き餌を撒きすぎ。ミステリマニアを騙すためだけのレッドヘリングって、密室のための密室と大差ないゾ。まあここらへんは好みの問題かな。見事に騙されたァ、と思うか、だから何なんだよ……と思うか。

 ある春のこと、おかあさまはピストルで殺された。その日のことをあたしはよく夢に見る。急にあたしは自分の手の中に硬い冷たいピストルの感触を覚えるのだった……。
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魔女の死んだ家
篠田 真由美著
講談社 (2003.10)
ISBN : 4062705656
価格 : ¥1,995
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