『チャーリー退場』アレックス・アトキンスン/鈴木恵訳(創元推理文庫)★★☆☆☆

 瀬戸川猛資氏が『夜明けの睡魔』で評価しており、植草甚一選クライム・クラブの一冊でもあり、となれば否が応でも期待してしまう。むむ? 瀬戸川氏が「なんだか知らないけど、やたらに迫力のある」と書き、毛色の変わったセンスが光るクライム・クラブからの一冊にしては、ずいぶんと古くさい普通の探偵小説だった。事件が起こって、だらだらと尋問やら捜査があって、関係者同士のごたごたがあって――どちらかといえば地味な黄金期本格探偵小説といった趣。そういうものとして読むのであれば、それはそれでそういうのが好きな人にはありなのだろうが。

 舞台中に人が殺されて、公演中に捜査を行う。たしかに「迫力のある」はずの設定ではあるのです。異様なサスペンスがあってもおかしくはないのです。ところが何だか地味。退屈。これはたぶん、登場人物に魅力がないのが大きい。誰がどうでもいいじゃないかという気にさせられてしまう。

 誰がどうでもいいようなミステリというのは確かに昔の作品にはけっこうあって、それが探偵の魅力だったりトリックのインパクトだったり歴史的価値だったりで今日でも読むに耐えうる作品になっていたりするのだが、本書の場合はとことん地味でこまごましてるんだよなあ……。

 今となっては……な作品でした。

 楽屋で“マクベス”を引用すると凶事が起きる? そうとは知らず、新顔の女優がその台詞を口にした。そして、幕が下りるや、主演男優チャーリーが毒殺された! だが、主役が死んでも舞台は続けなければならない。ファーニス主任警部は次の開幕までに犯人を挙げることができるのか? 舞台監督や演出家、俳優たちを相手に、警部の綿密な捜査は続く。幻の本格ミステリ、新訳決定版。
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チャーリー退場
アレックス・アトキンスン著 / 鈴木恵訳
東京創元社 (2004.4)
ISBN : 4488265049
価格 : ¥882
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