『殊能将之読書日記 2000-2009』殊能将之(講談社)★★★★☆

 殊能将之ウェブ日記より、読書日記の部分を抜き出したものです。「リーディング」という形式を取って(当時の)未訳小説が紹介されています。

 解説で法月綸太郎氏が瀬戸川猛資氏の名前を出していますが、紹介されている作品よりも紹介文の方が面白い(面白そう)というところに共通点はあるかもしれませんね。(殊能氏自身もそうしたタイプの作品を「あらすじ美人」と書いてます)

 グラディス・ミッチェル『月が昇るとき』を読んでさほど面白く感じなかった記憶があるのですが、「常軌を逸したアガサ・クリスティ」などと書かれると、読み返したくなってしまうじゃありませんか。

 マイクル・イネスにしても、「オフビート」という評価はよく見かけますが、「本格どころか、ミステリですらないオフビートな話」と書かれると、同じ「オフビート」でも印象がまったく違って見えます。(『The Daffodil Affair(水仙号事件)』)。

 トマス・M・ディッシュについて、あれは「ワ・レ・ワ・レ・ハ・ウ・チュウ・ジン・ダ」というふうに読むべきという指摘には目から鱗

 註釈にあるフリッツ・ライバー『罪深き者たち』の加筆訂正エピソードには笑うしかありません(^^。

 奇想コレクションアヴラム・デイヴィッドスンの巻は、こうやってできあがって行ったんですね。リアルタイムで読んでいた人たちは、さぞや完成が楽しみだったに違いない。

 1から13までのタイトルを集めた殊能版「黄金の十二」、面白い試みだと思います。粒ぞろいにするのは難しいとは思うけれど。

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