『閉じた本』ギルバート・アデア/青木純子訳(東京創元社〈海外文学セレクション〉)★★☆☆☆

 事故で眼球を失った作家の口述筆記用助手となった有能な青年。しかし何かおかしい。何かが起きている。助手という眼を得て、作家は以前より深い闇に落ちていく。青年の正体は? 会話と独白のみの傑作。結末の驚き!

 『A Closed Book』Gilbert Adair,1999年。

 以下、ネタバレ感想

 ミステリとしては高い点がつけられない。なにかのパロディだろうか? 『ラブ&デス』も『ベニスに死す』のパロディみたいだし。本書もそんな感じではある。会話のみによる一人称視点というのがやりたかっただけなんだろうな。そのためには盲者を主人公にするのが手っ取り早い。結果的に、目が見えないというのを生かし切れていない作品になってしまった。

 せっかくの“目が見えない”という趣向なのだから、最後に明かされる青年ジョンの正体も、目が見えないゆえに気づかないような人物にしてほしかった。二十二年も昔の子供時代のことでは、たとえ相手の目が見えていたとしても、今度の犯行は可能なのだ。だって十歳のとき以来会っていない人間に二十二年ぶりに会ったってばれないしょ。実は知り合いなのに、目が見えないゆえにばれていない、という方が面白かった。

 それは犯行方法にも言える。閉所恐怖症という都合のいい伏線があるからいいようなものの、あれじゃ目が見えようと見えまいと関係ない。目が見えない、とか、車椅子生活、とかいうのを、抵抗したくてもできないことに対する、都合のいい言い訳に使ってる話でした。
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