『黒祠の島』小野不由美(詳伝社文庫)

 とても端正で古典的な推理小説。もっと伝奇っぽいのかと思っていたので驚いた。舞台もロジックも奇想ではなく手堅い。

 真相にはこの島独特の存在が活かされているわけなんだけれど、そういう異世界の設定が徹底されているだけにかえって違和感があった。麻耶雄嵩『鴉』みたいに開き直ってはっきり完全に異世界だといいんだけれど、本書は現実世界と地続きでありながらなおかつ異世界でいようとしているため、細かいところまで現実的な手続きを踏んでいて、そこが辻褄合わせてるなぁ頑張ってるなぁという印象なのだ。

 いやむろん普通はそういう部分に感心するものなんだろうけど、わたしとしては異世界にどっぷり浸かりたかったのよ。細かいツッコミどころを現実的にフォローするような話よりも。

 だからねえ。横溝正史の世界とか、異世界ミステリとか、そういうのを期待するとなんか違うんですよ。ジャパニーズ・ホラーのテイストに近いのかもしれないな。一歩近所から外に出たら、異なる論理の人がたくさん住んでいた。同じ町内なのに。そんな感じ。

 黒祠や解豸のペダントリーが面白かった。

 作家葛木志保が失踪した。パートナーの式部剛は、過去を切り捨てたような彼女の履歴を辿り「夜叉島」に行き着いた。その島は明治以来の国家神道から外れた「黒祠の島」だった……。嵐の夜、神社の樹に逆さ磔にされた全裸女性の死体。さらに、島民の白い眼と非協力の下、因習に満ちた孤島連続殺人が! その真相とは? 実力派が満を持して放つ初の本格推理。

 黒祠の島 『黒祠の島
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