「The Presser」A.E.Coppard(コッパード) ★★★★☆

 十歳のジョニー・フリンは母元を離れて伯母に預けられていた。貧乏なジョニーは学校にも行かず仕立屋で働いている。仕立屋にはサルキーというアイロンがけ職人がいた。ほかの従業員は女ばかり。ジョニーはヘレン・スミザースさんのことが好きだった。店主のアラバスターさんや従業員のグレンジャーおばさんがときどきくれるお駄賃で食べ物を買うのがジョニーのいちばんの楽しみだった。

 同姓同名ですが「さくらんぼの木」のジョニー・フリンとは別人のようです。ヘレンと娘のヘティーを暴力夫から救い出して幸せにするシンデレラ物語なのですが、悲しいことにジョニーにはお金も力も魔法もありません。救い出すヒーローは別の人間。少年にとってはほろにがい思い出です。槇原敬之「二つの願い」を思い出しました。「雨が止みますように 電話がきますように/二つの願いは必ずひとつしかかなわない」。アラバスターさんがお駄賃をくれるという願いはかないましたが……。それでもこの物語が心温まるのは、もうひとつの思いがけない贈り物が最後に待っているからです。
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collected coppard The Collected Tales of A. E. Coppard

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