『If I Die Before I Wake』Sherwood King,1938年。
なんでポケミス映画座ではないのだろうと思ったら、訳者の持ち込み企画なのか。
映画は未見ですが、ミステリではすっかりお馴染みになった偽装殺人(偽装自殺)ネタなので、途中までの話の展開は何となく予想がつきます。
それでもまあサスペンスなんてどれもベタといえばベタなので、文章が悪くなければそれなりに楽しめるものです。だから本書も途中まではさらさらと楽しく読んでいたのですが、中盤辺りからいきなり雰囲気ががらりと変わります。
法廷サスペンスになるのですね。当たり前ですが何しろとにかく必死ですから、ただごとじゃない迫力があります。ただしそれは論理劇としての迫力ではなく、あくまでサスペンスとしての迫力です。映画などでお馴染みの通り、向こうの裁判なんてほとんどいじめ合いみたいなもんですから。だからミステリっていうよりもワイドショーみたいな面白さなんですよね。。。
真相の割れ方も、ミステリ的にはいただけない。ほとんど偶然とか運のよさといってもいいほどで、ご都合主義と言わざるを得ないでしょう。
完成度は決して高くありませんが、余裕のあるロマンチック・サスペンス+エグい法廷サスペンスとして、まずまずの出来だったと思います。
雇われ運転手をしている元船員の俺に、弁護士のグリズビイがもちかけてきた、ちょっと風変わりな“殺人計画”。殺してほしいのは、なんとグリズビイ本人。もちろん本当に殺すのではない。彼を殺して、死体を海に捨てたと自白しろと言うのだ。自白があっても肝心の死体が見つからないから、警察は手の出しようがない。俺は無罪放免で報酬を手に入れ、グリズビイは離婚を承知しない妻から逃れて新しい人生を歩むという仕組みだ。ためらいつつも結局は一枚噛むことにした俺だったが……オーソン・ウェルズが監督・主演で映画化した幻のサスペンス(裏表紙あらすじより)
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『上海から来た女』
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